ネットでは語られないEOS Rの実力

2018/9/16

目次


  1. はじめに
  2. ボディー内手振れ補正が搭載されていない
  3. 連写速度が遅い
  4. 瞳AFがシングルAFしか使用できない
  5. 高解像度モデルがない
  6. ローパスフィルター搭載
  7. まとめ


1. はじめに


2018/9/9、長い間噂になっていたキヤノンフのルサイズ対応ミラーレス一眼、EOS Rが発表されました。


EOS RとRF50mm F1.2 L USM

期待が大きかったせいもあるのでしょうが、以下の様にいくつかガッカリしたとの指摘もあります。

ボディー内手振れ補正が搭載されていない。

連写速度が遅い。

瞳AFがシングルAFしか使用できない

高解像度モデルがない

依然ローパスフィルターが搭載されている

ですが、本当にそうなのでしょうか。

もっと正確に言うと、本当にそれが正しい評価なのでしょうか?

本書はキヤノンとは一切何の関係もありませんが、これらの指摘がはたして正当な評価なのかどうか、じっくり検証してみたいと思います。


2. ボディー内手振れ補正が搭載されていない


今どきのミラーレス機でしたら、殆どの機種に5軸のボディー内手振れ補正が搭載されています。

ですので、EOS Rにボディー内手振れ補正が搭載されていない事から、ガッカリされる方が多いのは無理かなる事だと思います。

ですが、ミラーレス一眼にとって、ボディー内手振れ補正は本当に必須条件なのでしょうか?

という訳で、先ずは5軸と呼ばれる手振れ補正が、どんな場合に有効かについてお伝えしたいと思います。


SONY α7 IIの5軸手振れ補正

詳細はこちらをご覧頂くとして結論を述べますと、一般的な風景や人物の撮影においては、実の所角度振れ(YawとPitch)の2軸しか役に立っていないのです。

だったら残りの3軸は何をしているかと言えば、シフト振れ(XとY)の2軸は接写のときしか役に立たないし、回転振れ(Roll)の1軸は手持ちで長時間露光を行う場合しか効果は無いのです。

さらに一般撮影に有効な角度補正においては、ボディー内手振れ補正より、補正角を大きく取れるレンズ内手振れ補正の方が断然有利なのです


レンズ内手振れ補正の場合、光軸を大きくずらせる

実際フルサイズ対応ミラーレス機の先駆モデルとなったα7シリーズのファインダーの覗いてみると、最大5段分の手振れ補正効果と謳いながら、よほど注意してファインダーを覗かないと、手振れ補正が働いているかどうか分からない程の効果しかありません。

それをしっかり認識しているのがキヤノンです。

このため、EOS Rにおいて、レンズ内手振れ補正があれば殆ど意味の無いボディー内手振れ補正を搭載しなかったのは、極めて理に叶った対応と言えます。

実際、今までに0.1倍以上の近距離撮影(単焦点レンズでの最短撮影距離以下)を何度したか、或いは三脚を使わずに何度夜景撮影をしたかを思い出して頂ければ、その妥当性をご納得頂けると思います。

ただし恐らく営業上の理由で、いつかボディー内手振れ補正を搭載する事になるのでしょうが、本サイトとしては(レンズ内手振れ補正があれば)無用の長物と言いたい所です。


3. 連写速度が遅い


次に言われているのが、EOS Rの連写速度がAF固定で8コマ/秒、AF/AE追従で5.5コマ/秒と競合機より遅い、という事です。

具体的には下の表にあります様に、明らかにEOS Rの連写速度は競合機のSONY α7 IIIやNIKON Z 6より見劣りします。

SONY α7 III
(2400万画素)
EOS R
(3000万画素)
NIKON Z 6
(2400万画素)
AF固定 8コマ/秒 12コマ/秒
AF/AE追従 10コマ/秒 5.5コマ/秒 5.5コマ/秒
フルサイズミラーレス機(標準画素)における連写速度の比較

ですが、忘れてはならないのがEOS Rの画素数は、競合機より25%も画素数が多い3000万画素という事です。

これに伴う画像の読み取り時間から考えれば、連写速度が多少遅くなるのは無理からぬ事とも言えます。

と言いたい所ですが、4200万画素のSONY α7R IIIや、4500万画素のNIKON Z 7と比べても、確かに見劣りします。

SONY α7R III
(4200万画素)
EOS R
(3000万画素)
NIKON Z 7
(4500万画素)
AF固定 8コマ/秒 9コマ/秒
AF/AE追従 10コマ/秒 5.5コマ/秒 5.5コマ/秒
フルサイズミラーレス機(高画素)における連写速度の比較

ですが、ここにも殆ど語られない秘密が隠されているのです。

ご存じとは思いますが、EOS Rは撮像素子全域をAFセンサーとして使えるデュアルピクセルCMOS AFを採用しています。


EOS RのデュアルピクセルCMOS AF

ですので、画素数は3000万ですが、受光素子自体は何とのその2倍の6000万素子もあるのです。

当然ながら6000万画素のデジカメと同じとは言わないものの、画素数4000万代の競合機より多少連写速度が遅くなるのは当然の事と言えるのではないでしょうか。

なおこのデュアルピクセルCMOS AFの優位性は、この後じっくりお伝えします。


4. 瞳AFがシングルAFしか使用できない


そして次なる指摘が、瞳AFがシングルAFしか使用できない、という事です。


EOS Rの瞳AF

確かにSONY α7シリーズ、或いはα9においては、既にコンティニュアスAFモードにおいても、瞳AFが使用可能です。

ですが、EOS Rを舐めてはいけません。

と言うより、EOS Rと比べれば、他社の瞳AFははっきり言ってまだオモチャのレベルと言わざるを得ません。

先程お伝えした様に、EOS RはデュアルピクセルCMOS AFを採用しています。

これは、全画素を像面位相差AFセンサーとして使えるという、とんでもない能力を持っているのです。

一方、他社の像面位相差AFセンサーは、撮像素子上に僅か数万個のAFセンサーを乗せただけでしかなのです。

像面位相差AFの場合、絞り開口径が大きくなるほど基線長が長くなるという特徴(優位性)がありますが、一番輝度が高くて測距し易い光束の中心部分にAFセンサーが無ければ、近くの薄暗い部分でピントを合わせるしかないのです。


一般的な像面位相差AFにおける光束とAFセンサーの位置関係

上のイラストは多少誇張して描いていますが、一般的な像面位相差AFの場合、AFセンサーが少ないため光束の中心とAFセンサーが一致しない事が多々あり、測距精度が劣ると言うのは、凡そ分かって頂けるのではないか思います。

それ故他社機では、最後に更にコントラストAFでピントを追いこんでいるのです。

ただし、このコントラストAFにおいても、期待するほどの精度は無いのは、コントラストAFだけしか搭載していないα7Sで確認済みです。(詳細はこちら

ですので、ファインダーを覗くと瞳に合焦マークは出るものの。そこに確実にピントが合っているかどうかは甚だ疑わしいのです。


瞳に合焦マークが出ているからといって瞳にピントが合っている訳ではない

それに対してEOS RのデュアルピクセルCMOS AFは、全画素がAFセンサーの機能を持っていますので、確実に被写体までの距離を正確に捉える事ができるのです。


デュアルピクセルCMOS AF(左)と一般的な像面位相差AF(右)

ただしAFセンサーが多いので、演算処理にどうしても時間が掛かる事から、現状ではシングルAFしか瞳AFが使えないという訳です。

少ないAFセンサーでピントが合っているかもしれないコンティニュアスAFモードの瞳AFと、より確実にピントが合うシングルAFモードでの瞳AF。

貴方ならどちらを選びますか?

なおこれも演算処理だけの話なので、行く行くはEOS Rにおいても、コンティニュアスAFモードでも瞳AFが使える様になるのは間違いないでしょう。

ついでに言っておきますと、一般的な像面位相差AFにおけるAFセンサー素子は、画像データを読み込めないので(画像データーが欠損しているので)、デジタル処理で周囲と似た色で塗りつぶしているのです。

キヤノンのデュアルピクセルCMOS AFは、画質面から見ても優れた方式と言えます。


5. 高解像度モデルがない


高解像度モデルが無い事についても、もう説明の必要はないでしょう。

キヤノンのミラーレス機は、他社機と大きく差別化できるこのデュアルピクセルCMOS AF搭載が必須になるでしょう。

だとしますと、もし5000万画素の撮像素子を搭載するとなると、受光素子は1億素子も必要となります。

そう簡単に実現できないのは、当然の事でしょう。


5000万画素のEOS 5Ds R(左)とEOS 5Ds(右)

このため当面は、EOS 5Dsが高解像部門を担い、ミラーレスの高解像度モデルは、あと数年が必要かもしれません。


6. ローパスフィルター搭載


ローパスフィルターと聞くと、誰しも擦りガラスの様な物で、単に偽色やモアレを防ぐものの、できれば無い方が良いと思われている事でしょう。

表面上はその認識に大きな間違いはないのですが、本質的には大きな間違いです。

詳細はこちらをご覧頂くとして、ベイヤー配列のフィルターを使った単板撮像素子の場合、理論上ローパスフィルターを使う事が前提になっているのです。


SONY RX1 mark IIにおける、ローパスフィルターのON/OFF機能説明図

すなわち単に偽色やモアレが目立たなくするためにローパスフィルターが付いているのではなく、被写体と極力同じ色を再現させるためには、どうしても一つの光を4画素に振り分けるローパスフィルター(上図参照)が必要なのです。

この点キヤノンには明確なポリシーが有る様で、5000万画素のEOS 5Dsを含めて(EOS 5Ds Rを除く)全機種においてローパスフィルターを搭載しています。

他社においては、本当の色よりむしろ分かり易い解像度に主体を置いているのに対して、キヤノンの本当の色を求める姿にむしろ好感すら覚えます。


7. まとめ


いかがでしたでしょうか。

写真の大敵は、何と言ってもブレとボケでしょう。

そして最も重要なのは、被写体に忠実な色を再現した画質でしょう。

この観点からEOS Rをまとめると、以下の様になります。

①手振れ:キヤノンはレンズ内手振れ補正が最も有効と考えており、EOS Rにおいてそれに更に磨きを掛けてきた。

②ボケ:デュアルピクセルCMOS AFの採用により、他社より数段精度の高い像面位相差AFを実現した。

③画質:デュアルピクセルCMOS AFの採用により画素欠損のない画質と、ローパスフィルター搭載による極力被写体に忠実な色再現を目指している。


本書としては、実際には2軸しか役に立たないボディー内手振れ補正や、数少ないAFセンサーでピントが合ってるかどうか分からない瞳AF搭載機より、余程潔くて好感が持てるのですが、皆様はいかがお考えでしょうか?

正直な所、発表される前は全く興味の無かったEOS Rですが、仕様を知っていくうちにどうしても使ってみたくなってきました。



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