すっきり分かる
電子シャッターとフラッシュ同調速度の関係

2018/3/23

目次


  1. はじめに
  2. フォカールプレーンシャッター
  3. ローリングシャッター
  4. なぜローリングシャッターでもフラッシュが使えるのか
  5. フォーカルプレーンシャッターとローリングシャッターの本質的な違い
  6. フラッシュが使える機種と使えない機種
  7. まとめ

はじめに


どうしても分からない。

従来のデジカメに良く使われたCCDの電子シャッターは、グローバルシャッターと呼ばれる全画素同時露光一括読み出しですので、当然ながらフラッシュの全速同調が可能です。

一方最近のデジカメに良く使われているCMOSセンサーの電子シャッターは、ローリングシャッターと呼ばれるライン露光順次読み出しです。

このため、フラッシュの閃光は全ラインに同時に光を当てる事はできないので使用できない筈です。

なぜならば、後述する様にローリングシャッターと同じ高速側のフォーカルプレーンシャッターの場合、ライン露光と同じスリット露光になりフラッシュは同調できないからです。

このため大多数のデジカメ一眼においては、電子シャッター(サイレントシャッター)使用時には、フラッシュが発光できない事になっています。


電子シャッターではフラッシュは使用できないとするSONY α9の説明書

にも関わらず、Nikon 1 J5においては、電子シャッター(ローリングシャッター)しか搭載していないにも関わらず、1/60秒より遅いシャッター速度でフラッシュが同調が可能です。


ローリングシャッターでありながらフラッシュを使用できるNikon 1 J5

何故なのでしょう?

長い間疑問に思っていたのですが、ようやくその理由が分かりましたので、ここにご紹介したいと思います。


フォーカルプレーンシャッター


本題に入る前に、先ずはフォーカルプレーンシャッターについて、ここで触れておきたいと思います。

ご存じの通り、フォーカルプレーンシャッターとはフィルムカメラ時代から一眼レフに使われてき機械式のシャッター機構ですが、現在の多くのデジカメにも依然使われています。


Nikon D850のフォーカルプレーンシャッター

これは先膜と後幕の遮光幕が、レンズからの光を通過させたり遮光したりする事で、撮像素子に当たる光の時間と量を調整します。

具体的には先膜が開いた後、暫く間を置いて後幕を閉じれば、遅いシャッター速度になり、撮像素子に当たる光は多くなります。


また先膜が開いたのち後幕が直ぐに閉じれば、早いシャッター速度になり、撮像素子に当たる光は少なくなります。

ただし先膜も後幕もメカ駆動ですので、どうしても走行スピードに限界があります。

このため、もっとシャッタースピードを速くするには、シャッターを全開せずに、先膜が走り始めた直後に後幕を閉じれば可能になります。


この場合、一度もシャッターは全開する事なく、細い隙間(スリット)が上から下に降りてくる事になります。

すなわち、ローリングシャッターと同じ様なものです。

ですので、この状態で動く被写体を撮ると、下の写真の様に画像に歪みが生じます。


縦走りのフォーカルプレーンシャッターで撮った動く被写体

またフラッシュの閃光を撮像素子全面に照射するためには、どうしてもシャッターが全開状態になる低速のシャッター速度を使う必要があるのも分かって頂けると思います。

話が長くなってしまいましたが、ローリングシャッターとは、この細いスリットを走らせて露光するフォーカルプレーンシャッターの動作と同じなので、フラッシュの閃光を撮像素子全面で受ける事はできないと思った次第です。


ローリングシャッター


にも関わらず、一部のデジタル一眼はローリングシャッターでありながら、なぜフラッシュと同調できるのでしょうか?

という訳で、ローリングシャッターの仕組み、すなわりCMOSセンサーの読み取り方法を調べてみたいと思います。

ところがネットをいくら検索してみても、CMOSセンサーのダイアグラム(概略図)はいくらでも見つかるのですが、読み取り方法に関するタイミングチャートがどうしても見つかりません。


CMOSセンサーのダイアグラム

何かこの辺が企業秘密なのかなのかと思い半ば諦めかけた所、ようやく見つけました。

撮像素子については第一人者とも言えるSONYが、分かり易いタイミングチャートを公表してくれていました。

それも本書が知りたかったフラッシュの同調について、直接触れられています。

SONYのCMOSセンサーに関する記事

上のチャートは、ビデオ機におけるCMOSセンサーの画像データを、上から1ラインずつ高速で読み込んだ場合のタイミングチャートです。

ビデオ機用に書かれていますので、多少分かり難いかもしれませんが、1フィールドと書かれた部分が1枚の写真だと思えば理解し易いと思います。

これをご覧頂きます様に、1ラインずつ読み込む度に、僅かづつ時間が経過している事が分かります。

だとすると、前述のスリット走行でのフォーカルプレーンシャッターの動作と同じです。

ですので、決してフォーカルプレーンシャッターで言う所の全開状態にはなりませんので、フラッシュと同期する事はできない筈です。


なぜローリングシャッターでもフラッシュが使えるのか


なんだやっぱりダメじゃないかと思ったのですが、このチャートの下にありがたい事に以下の説明が書かれていました。

スローシャッターを含めたなるべく遅いシャッタースピードで撮影すると、明るさが分割される確率が下がる可能性があります。

これを読んでようやく分かりました。

このチャートの黄色の帯は1ライン毎のデーター転送時間を表しているのではなく、1ライン毎の露光時間(すなわちシャッタースピード)を表すタイミングチャートだったのです。

ローリングシャッターのタイミングチャート

そして1ライン毎の黄色の帯のズレ幅こそが、1ラインの読み込み時間を表しているのでしょう。

ですので、当然シャッタースピードが遅くなれば、この黄色の帯(露光時間)は長くなり、1ラインの読み込み時間が長くなれば、1ライン毎にズレが大きくなるのです。

そうだとすると、1ラインの読み込み時間が同じでも、シャッタースピードをどんどん遅くしたとしたら、タイミングチャートは以下の様になります。


するどい方でしたら、このチャートも見ただけでもう分かって頂けるでしょう。

早いシャッタースピードの場合(上左図)、フラッシュを発光させても、一部のラインしかその光を受け取る事ができません。

すなわち、下の写真の様に画像の上部しか明るくなりません。

画像上部だけ明るいフラッシュ非同調の写真

それに対して、シャッタースピードを遅くすると(上右図)、1ライン毎の受光時間が長くなるので、全てのラインが露光中のタイミングでフラッシュを光らせてやれば、フラッシュの光を全ラインで受け取る事が可能なのです。

すなわち、ローリングシャッターであっても、シャッタースピードが遅くなれば、フラッシュを同調させる事は可能なのです。

分かってしまえば簡単な事でした。


フォーカルプレーンシャッターとローリングシャッターの本質的な違い


本来でしたら、フォーカルプレーンシャッターとローリングシャッターの違いを正確に認識してから、本記事を書くべきなのでしょうが、今回は逆です。

すなわちフラッシュの同調の違いから、フォーカルプレーンシャッターとローリングシャッターの本質的な違いがようやく分かりました。

先ずフォーカルプレーンシャッターの場合、早いシャッタースピードにするため、細いスリットになると、フラッシュを同調させる事はできません。

一方ローリングシャッターの場合は、ラインという細いスリット単位で露光しているのはフォーカルプレーンシャッターと同じなのですが、その露光するラインが下に降りてきてもまだ上のラインは露光を続けているという事です。

ですので、はじめににおいて、ローリングシャッターとはライン露光順次読み込み出しとお伝えしましたが、むしろ複数ライン露光順次読み込み出しと言った方がより正確だと思われます。

何とかこれを絵で表現したいと思ったのですが、難しいので諦めました。


フラッシュが使える機種と使えない機種


それでは最後の疑問です。

ではなぜ同じローリングシャッターでありながら、フラッシュが使える機種と使えない機種があるのでしょうか?

これはもう簡単でしょう。

下はSONYのα9とNikon 1の撮像素子の大きさを比べたものです。


画素数自体はそれほど違いませんが、大きさがこれほど異なる(7.4倍)のですから、当然ながら読み取り速度は小さい方が有利なのは間違いありません。

このため、下のチャートの様に同じシャッタースピードでも、小型の撮像素子を搭載したデジカメではフラッシュが使えるという訳です。


恐らくSONYのα9においても、遅いシャッタースピードであればフラッシュを同調させる事はできるのでしょうが、折角高速でフラッシュと同調できるメカシャッター(フォーカルプレーンシャッター)を搭載しているので、割り切っているのかもしれません。


まとめ


それではまとめです。

1. CCDのグローバルシャッターは、全画素同時露光一括読み出しなので、フラッシュの全速同調が可能である。

2. CMOSセンサーのローリングシャッターは、複数ライン露光順次読み込み出しなので、シャッター速度を遅くすればフラッシュの同調が可能である。

3. ただし小型のCMOSセンサーの場合、読み取り速度が早いので、早いシャッタースピードであってもフラッシュの同調が可能である。

本書がお役に立てば幸いです。






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