綺麗に撮れるデジカメ選び
理論編


 索引


 1. はじめに

 2. 撮像素子の大きさによる分類
  1: 撮像素子とは

  2: 撮像素子が大きいと綺麗に写る?
  3: 撮像素子が変わると画角が変わる?
  4: フルサイズはボケ易い?
  5: ポートレートに適した撮像素子とは?


 3. カメラの構造による分類
  1: デジタル一眼レフカメラ
  2: ミラーレスデジタル一眼カメラ

  3: コンパクトデジタルカメラ

 4. ポートレートにほしい機能
  1: 顔/瞳認識機能
  2: 手振れ補正機能
  3: 背景ボカシ機能
  4: 美肌機能


2-4. フルサイズはボケ易い?


撮像素子と画角の関係を分かって頂いた所で、次はいよいよポートレートで最も重要な背景のボケについて考えてみます。

今更述べる必要もないでしょうが、ポートレートの撮影においては、被写体を綺麗に浮き立たせるために、いかにして綺麗に背景をボカスかが鍵になります。

しかしながらこのボケに関して、大きな撮像素子ほど大きなアドバンテージがあるのです。

逆に言えば、小さな撮像素子ほどボケを作るのが難しいのです。

その理由を以下にじっくりと、分かり易くご説明したいと思います。

1) フルサイズとAPS-Cサイズの写りの違い


それでは先ず、同じ場所から同じ135mm F2.0のレンズを使って、フルサイズとAPS-Cサイズのカメラで撮った2枚の写真を見て下さい。

今回は画角ではなく、ボケに注目して下さい。

 
フルサイズ(135mm F2.0)         APS-Cサイズ(135mm F2.0)

画角が変わる事で、被写体同様にボケも拡大されていますが、ボケ具合は同じだと思われますよね。

フルサイズであってもAPS-Cサイズであっても、同じレンズで同じ絞りを使えば、画角(写る広さ)は変わるものの同じ様なボケ効果を得る事は可能なのです。

あれ、でもさっき撮像素子が小さいとボケ難いと言ったじゃない、と思った方はその通りです。

何故ならば、APS-Cサイズのカメラに135mm F2.0のレンズを付けている限り、絶対に左の様な写真は撮れないからです。

ですので、話は更に続きます。

2) 被写体を同じ大きさにしたらどうなるか


上の写真の様に画角が異なる状態では、両者とも同じボケですが、両者を正しく比較するためには、当然同じ条件にして比較する必要があります。

すなわち、APS-Cサイズのカメラで、(左上の写真と同じ様に)上半身を撮影して比較しなければなりません

という訳で、APS-Cサイズカメラのレンズを換えて、左の写真の様に上半身まで写してみましょう。

そのためには、もともと使っていた135mmレンズの画角が18°なので、APS-Cサイズのカメラで画角18°になるレンズを使用しなくてはなりません。

これはレンズの仕様書を調べなくても分かります。

キヤノンの場合、フルサイズ対応レンズの焦点距離を1.6(正確には1.617ですがここでは簡単に1.6で計算します)で割れば、APS-Cサイズで同じ画角になるレンズの焦点距離が分かります。

ですので、85mm(135÷1.6=84.3)のレンズを使って、同じく絞りをF2.0にして同じ場所から撮影してみましょう。

       フルサイズで画角18°          APS-Cサイズで画角18°
      

さて左上の写真と同じ様になるでしょうか?


モデルが人相の悪いノラ猫で恐縮ですが、上の写真の様にボケは同じにはなりません。

なぜならば、85mmのレンズの方が、135mmの方よりも広角側ですので、同じF2.0の絞りだと85mmの方がボケ難いのです。

3) APS-Cサイズで同じボケになる様にするにはどうするか


では85mmのレンズで絞りをいくつにすれば同じボケが得られるのでしょう。

F1.8でしょうか、それともF1.2でしょうか、或いは中間のF1.4でしょうか?

      

多少専門的な話になりますが、ボケの量はレンズの有効口径に比例します。

有効口径は焦点距離を開放絞り値で割れば算出できますので、135mm F2.0のレンズの場合、有効口径は以下の様に67.5mmなります。


有効口径 = 焦点距離/絞り値
= 135mm÷2.0
= 67.5mm

とすると、85mmで有効口径が67.5mmになる様にするには、絞り値はF1.26(=85÷67.5)になります。

実際、下の写真の様におおよそ同じボケになる事が分かって頂けると思います。


すなわち、F2.0より2倍明るい85mm F1.4でも足らず、2.5倍(2.02-1.262=4/1.59=2.51)明るいF1.26のレンズを使えば、理論的に同じボケが再現できるという訳です。

これを絞りの段数(AV値)に変換すると以下の式(エクセル関数でも表記)の様に、1.3段(1+1/3段階)となります。

絞り段数(AV)= log2 2.51= LOG(2.51,2)= 1.3

これをさらに図示化すると以下の様になります。


生憎85mmでF1.26のレンズは市販されていないのですが、以下のアマゾンの広告にもあります様に、その上の85mm F1.2のレンズを見る限りかなり高価なのは間違いありません。

     

135mm F2.0   85mm F1.8    85mm F1.2


すなわち、小さな撮像素子のカメラで、それより大きなサイズの撮像素子のカメラと同じ画角で同じボケ効果を出すのは、かなり難しいという事を分かって頂けましたでしょうか。




キヤノンのAPS-Cサイズに関するお話

さてここまでは、キヤノンのAPS-Cサイズを例にしてお話ししてきました。

ところが、キヤノンのAPS-Cサイズは、他社(ニコン、ソニー等)のAPS-Cサイズより若干小さいのです。

このため、他社製のAPS-Cサイズとフルサイズの違いについてもお伝えしておきます。

【サイズ】

先ずサイズの違いですが、他社のAPS-Cサイズは23.6x15.6㎜なのに対して、キヤノンは22.2x14.8mmしかなく、他社のAPS-Cサイズを100%とするとキヤノンのそれは88%しかないのです。

【焦点距離】

このため、他社製APS-Cサイズ機でフルサイズの135㎜レンズと同じ画角に対応するレンズは、90㎜(=135÷1.5)になります。

【絞り】

ですので、90mmで有効口径が67.5mmになる様にするには、絞り値はF1.33(=90/67.5)になります。

キヤノンの絞り値はF1.26でしたので、これを図で表すと以下の様になります。


また、フルサイズのF2.0と明るさを比較すると2.25倍(22/1.332=4/1.78=2.25)となり、やはりキヤノンの2.5倍と僅かに異なります。

更にこれをAV値にすると、1.2段とキヤノンの1.3段と異なるのですが、1/3ステップで表示すれば、いずれも1+1/3段階になります。

このため本書におきましては、キヤノンのAPS-Cサイズを例に述べていますが、その他一般のAPS-C サイズとは多少異なります事ご容赦願います。


4) 焦点距離の相関表


次にフルサイズと同じボケを作るためには、どれくらいの明るさのレンズが必要かデジカメ一眼の種類(撮像素子のサイズ)毎に見てみたいと思います。

でもその前に、フルサイズと同じ画角にするために、焦点距離の相関表をお見せしておきましょう。

No. FULLサイズ APS-Cサイズ APS-Cサイズ
(キヤノン)
4/3サイズ CXサイズ 1/2.3サイズ
1 24 mm 16 mm 15 mm 12 mm 9 mm 4 mm
2 35 mm 23 mm 22 mm 18 mm 13 mm 6 mm
3 50 mm 33 mm 31 mm 25 mm 18 mm 9 mm
4 85 mm 56 mm 52 mm 43 mm 31 mm 15 mm
5 100 mm 65 mm 62 mm 50 mm 37 mm 18 mm
6 135 mm 88 mm 83 mm 68 mm 50 mm 25 mm
7 180 mm 118 mm 111 mm 90 mm 66 mm 33 mm
8 200 mm 131 mm 123 mm 100 mm 73 mm 36 mm
9 300 mm 196 mm 185 mm 150 mm 110 mm 54 mm
10 400 mm 262 mm 247 mm 200 mm 147 mm 73 mm
変換係数 1.000 0.654 0.617 0.500 0.367 0.182
デジカメ一眼の焦点距離の相関表

細かい説明は不要とは思いますが、例えば一般的なAPS-Cサイズのカメラを使って、フルサイズの135mmと同じ画角で撮影したい場合は、88mmのレンズを使う必要があります。

また4/3サイズのカメラで50mmのレンズを使うと、フルサイズの100mmの画角と同じになります。

なお表の一番下に焦点距離の変換係数を載せておきました。

ですので、もしフルサイズの85mmをCXサイズに変換したければ、85mmに0.367を掛けて31mmとなります。

逆にCXサイズの13mmをフルサイズに変換したければ、13mmを0.367で割って35mmになります。


5) 絞りの相関表


お待たせしました。

いよいよフルサイズと同じボケを作るための、絞りの相関表です。

下の表は、フルサイズを基準として、撮像素子の異なるデジカメに同じ画角のレンズを取り付けて、同じ様にボカスのに必要な絞り値を示しています。

FULLサイズ APS-Cサイズ APS-Cサイズ
(キヤノン)
4/3サイズ CXサイズ 1/2.3サイズ
F 1.0 F 0.7 F 0.6 F 0.5 F 0.4 F 0.2
F 1.2 F 0.8 F 0.7 F 0.6 F 0.4 F 0.2
F 1.3 F 0.8 F 0.8 F 0.6 F 0.5 F 0.2
F 1.4 F 0.9 F 0.9 F 0.7 F 0.5 F 0.3
F 1.6 F 1.1 F 1.0 F 0.8 F 0.6 F 0.3
F 1.8 F 1.2 F 1.1 F 0.9 F 0.7 F 0.3
F 2.0 F 1.3 F 1.2 F 1.0 F 0.7 F 0.4
F 2.3 F 1.5 F 1.4 F 1.2 F 0.8 F 0.4
F 2.6 F 1.7 F 1.6 F 1.3 F 0.9 F 0.5
F 2.8 F 1.8 F 1.7 F 1.4 F 1.0 F 0.5
F 3.3 F 2.1 F 2.0 F 1.6 F 1.2 F 0.6
F 3.7 F 2.4 F 2.3 F 1.8 F 1.3 F 0.7
F 4.0 F 2.6 F 2.5 F 2.0 F 1.5 F 0.7
同じボケ量になる絞り値の相関表

例えば、フルサイズと同じ画角のレンズを使って、フルサイズのF1.4のボケを作るためには、APS-Cサイズの場合F0.9のレンズが必要になります。

絞り値だけではピンとこないかもしれませんが、フルサイズの50mm F1.4と同じボケを出すためには、APS-Cサイズでは33mm F0.9のレンズが必要という事です。

更には4/3サイズのカメラで、フルサイズのF1.4のボケを作るためにはF0.5と、とんでもなく明るいレンズが必要になります。

また現実的な話をすると、フジフィルムにAPS-Cサイズ用の56mm F1.2(9万4千円)という高級レンズがありますが、これはフルサイズ用に換算すると85mm F1.8(4万3千円)と普及レンズ並みのボケになるという事です。

     

56mm F1.2    85mm F1.8   85mm F1.8


更にオリンパスから今後F1.0のレンズが発売されると噂されていますが、それとてもフルサイズのF2.0のボケにしかならないという訳です。


6) 後に下がって撮ったらどうなるか


それでは次に、フルサイズとAPS-Cサイズのカメラで同じ大きさで被写体を撮る別の手を、お話ししておきましょう。

APS-Cサイズカメラで上半身まで撮影するもう一つの方法として、レンズはそのままで、今撮影している場所から更に後ろに下がる手もあります。(この場合画角が変わりますので、背景の写る範囲が異なります)

後ろに下がれば、当然被写体との距離が離れます。


上の図の様に、フルサイズとAPS-Cサイズのカメラに135mmレンズを付けて撮影したときの被写体までの距離が3.5mだとすると、APS-Cサイズのカメラに同じレンズを付けて、フルサイズで撮ったのと同じ大きさで被写体が入る様にするのには、1.62(変換係数)倍の5.7m被写体から離れなくてはいけません。

被写体と離れるとどうなるかと言うと、被写体深度が深くなってやはり背景がボケ難くなるのです。

いきなり被写体深度という難しい言葉が出てきましたが、要はレンズの特性として、近い物にピンとを合わせると背景はボケ易くなり、遠い物にピントを合わせると背景がボケ難くなるのです。

大雑把な計算値ですが、この場合のボケ量の減りは絞りで1+2/3段階分に相当します。

すなわち元々は135mm F2.0のレンズだったのですが、後に下がる事により、背景のボケはF3.7に絞ったのと同じくらいに低下したという事です。

ですから、APS-Cサイズのカメラでレンズを換えたり、後ろに下がったりしても、フルサイズと同じボケ効果を出すのは非常に難しいのです。

ただしです、前段でお話しました様に、被写体をアップ気味に撮っておけば、フルサイズと同じ様なボケ効果を得る事ができるという事は覚えておいて下さい。


7) まとめ


本項をまとめると、以下の様になります。

撮像素子の小さなカメラで、背景をボカスのは難しい。

ただし、被写体に近付く(被写体をアップで撮る)事によってボケ効果を期待できる。


ところで、スマートフォンの様にかなり小さな撮像素子になると、いくら近付いても背景までしっかりピントが合ってしまいます。

この場合、記念写真には最適なものの、ポートレートには全く向きませんので、もしポートレートを綺麗に撮りたいならば、少しでも大きな撮像素子を使ったカメラを別に購入するしかありません。

少し余談になるかもしれませんが、実は35mmフルサイズよりもっと大きな撮像素子を使うデジタルカメラは存在します。

    

Hasselblad H5D-60       Mamiya 645DF+



この様なカメラを使うと背景はおろか、油断すると被写体すらボケてしまう程です。

かなり長文になってしまいましたが、お分かり頂けたでしょうか?


2-5. ポートレートに適した撮像素子とは


それでは最後にポートレートに最適な撮像素子について考えてみたいと思います。

それに際して、各項のまとめを見てみましょう。

1)撮像素子が大きくなれば必然的に画素数は増え、画像は高精細になり綺麗に見える。
かと言って、いたずらに高画素を求める必要はない。


2)撮像素子が小さくなると、望遠レンズで撮ったのと同じ様な画像になる。
ただしレンズを換える事で、(撮像素子が小さくても)同じ画角の写真を撮る事は可能である。


3)撮像素子の小さなカメラで、背景をボカスのは難しい。
ただし、被写体に近付く(被写体をアップで撮る)事によってボケ効果を期待できる。


いかかでしょう。

これらを見る限り、1)と2)についてはポートレートにとって左程重要ではないと言えます。

という訳で、本章の最終まとめとしては以下の様にしたいと思います。

もし背景をぼかしたポートレートを撮りたいのならば、なるべく大きなサイズの撮像素子を搭載したデジカメが理想である。

撮像素子について分かった所で、次にカメラの構造の違いについて考えてみたいと思います。




2-4. フルサイズはボケ易い?

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2-3撮像素子が変わると画角が変わる?

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3. カメラの構造による分類



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