SONYワイヤレスフラッシュ実践ガイド

2017/07発行



はじめに


一昔前でしたら、ストロボと言えば暗闇で人を撮るための物でしかありませんでした。

ところが今では、バウンス撮影や、日中シンクロ、スローシンクロ、後幕シンクロ、ワイヤレスフラッシュと様々な機能が追加され、むしろカメラの性能よりもストロボの方が写真の出来を左右すると言っても過言ではない状況になってきました。


α7S+HVL-F43M(左)   α7R II+HVL-F60M(右)

特にワイヤレスフラッシュについては、光の強さと角度を自由に調整できるので、使いこなせれば非常に魅力的な写真が撮れます。

ところが、TTL自動調光でワイヤレスフラッシュを行った場合、絞りやシャッタースピード等を変えると、撮った画像にどう影響するのか今一つ良く分かりません。

また、デジカメの撮影モードや測光モードもどう設定すべきなのかも、良く分かりません。

という訳で、本書ではTTL自動調光でワイヤレスフラッシュをした場合、設定によって画像がどう変わるかについて、分かり易くご説明したいと思います。

今回使用している機材はSONY製ですが、基本原理は同じですので、キヤノンやニコンでも応用できると思います。

従来この様な記事は無かったと思いますので、是非ご活用頂ければと思います。


使用機材


本書におきましては、以下の機材を使用しています。

機材 名称
デジカメ SONY α6300
レンズ SONY SEL1670Z
ストロボ(親機) SONY HVL-F43M
ストロボ(子機) SONY HVL-F60M
三脚 ベルボン 小型三脚 EX-Macro

       
 α6300    SEL1670Z    HVL-F43M    HVL-F60M    EX-Macro


配置


今回の各機材の配置は以下の通りです。


上の配置図の様にデジカメの上に親機のストロボを装着し、子機のストロボで被写体となる花を照射します。

なお子機のストロボの横に白紙を貼付して、背面の襖(ふすま)への光を遮ると共に、撮った写真でストロボの発光量が分かる様にしています。


この配置で、デジカメの背面から撮ったのが上の写真になります。

なおデジカメからテーブルまでの距離は1.5mほどです。


設定


デジカメとストロボの基本設定は以下の様になります。

デジカメの設定
撮影モード 測光モード ISO感度 絞り シャッタースピード 調光レベル
マニュアル 評価測光 100 F4 1/60 0


親機ストロボの設定:ワイヤレスのコントローラー



子機ストロボの設定:ワイヤレスのTTL自動調光リモート



絞りと調光補正を変えるとどうなるか


それでは先ず、TTL自動調光の特徴を知るため、絞りと調光補正を変えて撮ってみましょう。

下の写真は、ISO感度100、シャッタースピード1/60の状態で、ストロボの調光補正量を-3、0、+3の三段階と、絞りをF4、F8、F16の三段階に変えて撮ったものです。

絞りと調光補正量を変えて撮影した画像

先ず写真を左から右に見た場合ですが、ストロボの調光補正量を増やしていくと、画像が明るくなっているのが分かります。

これは、ストロボの調光補正量を増やしていくと、ストロボの光量が徐々に増えている事を示しています。

ここまでは感覚的に理解し易いと思います。

次に写真を上から下に見ると、絞りを絞っても画像の明るさは同じになっています。

通常でしたら、シャッタースピードとISO感度が同じであれば、絞りを絞れば画像は暗くなる筈です。

ですのでこの場合は、絞りを絞ると、ストロボの光量も徐々に増えている事を示しています。

すなわち、ストロボのTTL自動調光の場合、絞りを絞ると被写体が同じ明るさになる様に、ストロボの光量を自動的に増やしているという訳です。

ちなみに、この1枚1枚の写真におけるストロボの光量を、一番左上の写真を基準にして表すと以下の様になります。

調光補正-3 調光補正0 調光補正+3
F4 基準
(1倍)
+3段
(8倍)
+6段
(64倍)
F8 +2段
(4倍)
+5段
(32倍)
+8段
(256倍)
F16 +4段
(16倍)
+7段
(128倍)
+10段
(1024倍)

この表をご覧頂きます様に、一番左上の写真と一番右下の写真では、ストロボの光量はEV値で10段階、倍率にすると何と1024倍も異なるのです。

写真を見るとそんなに差があるとは思えませんが、数値にしてみるとこれだけ差があるのです。

ですので、もしストロボの電池を長持ちさせたいのでしたら、絞りを開けて、調光補正量を小さくすれば良いと言えます。

なお一番左上の写真の背景が、他よりも僅かに明るいのは、ストロボの発行量が一番弱いので、部屋の照明(蛍光灯に付いた豆ランプ)の明るさを拾ったためです。

ですので、部屋を真っ暗にして撮れば、背景の明るさは同じになります。

逆に言えば、絞りを開けたり、調光補正量を小さくすれば、部屋の明かりの影響を受け易くなるという事です。

もっと言えば、部屋の明かりを取り入れて、背景をもっと明るくしたければ、絞りを開けて、調光補正量を小さくすれば良い事になります。

ここまでのまとめをすると、以下の様になります。

①TTL自動調光において、調光補正量を増やすと、ストロボの光量が増えて画像は明るくなる。

②TTL自動調光において、絞りを変えても、ストロボが自動的に発光量を調整するので、画像の明るさは変わらない。

③部屋の明かりを取り入れて、背景をもっと明るくしたければ、絞りを開けて、調光補正量を小さくすれば良い。

④またストロボの電池を長持ちさせたいのならば、絞りを開けて、調光補正量を小さくすれば良い。

ところでここまで読まれたら、もしかしたらカメラに付いている親機のストロボの影響はどうなっているのかと思われるかもしれません

それについては、後半に詳しくお伝えしますので、今の所は親機の影響は殆ど無いと考えておいて頂ければと思います。





シャッタースピードを変えたらどうなるか


それでは次にシャッタースピードを変えたらどうなるか、試してみましょう。

絞りと同じ様に、同じ明るさの画像になるでしょうか?

下の写真は、ISO感度100、絞りがF4、調光レベルは0のときに、シャッタースピードを1/30、1/60、1/125の三段階に変えて撮ったものです。


シャッタースピードを変えて撮影した画像

これをご覧頂きます様に、シャッタースピードを変えても、撮った写真はほぼ同じ明るさになっている事が分かります。

ただしこの理由は、絞りを変えたときの様に、ストロボの発光量が変わったためではありません。

TTL自動調光に限った事ではないのですが、ストロボの発行時間は数千分の1秒~数万分の1秒のため、(ストロボの同調速度以下であれば)シャッタースピードを変えても、画像の明るさには全く影響を与えないためです。

すなわち、絞りを変えたのとは異なり、ストロボの発光量は全て同じなのです。

なお、1/30の写真の背景が他より僅かに明るいのは、部屋の照明を拾ったためです。

ですので、もっとシャッタースピードを遅くしてやれば、背景を明るくする事が可能です。

本項のまとめです。

①ストロボ撮影においては、TTL調光かどうかに関わらず(ストロボの同調速度以下であれば)シャッタースピードを変えても画像の明るさは変わらない。

ただしこのとき、絞りを変えたのとは異なり、ストロボの光量は一定である。

② ③部屋の明かりを取り入れて、背景をもっと明るくしたければ、シャッタースピードを遅くすれば良い。



ISO感度を変えたらどうなるか


それでは次にISO感度を変えたらどうなるか、試してみましょう。

下の写真は、調光レベルは0で、絞りがF4、シャッタースピードを1/60のときに、ISO感度を50、100、200の三段階に変えて撮ったものです。


ISO感度を変えて撮影した画像

これをご覧頂きます様に、ISO感度を変えると(絞りやシャッタースピードを変えたのと同様)、撮った写真はほぼ同じ明るさになっている事が分かります。

この理由はISO感度を上げたのに伴って、ストロボの光量がダウンしたためです。

ですので、この場合は右にいくほどストロボの光量は弱くなっているのです。

なお、ISO200の写真の背景が他より僅かに明るいのは、部屋の照明を拾ったためです。

このため、(絞りを開けたり、シャッタースピードを遅くするのと同様に)、ISO感度を上げてやれば、写真全体を明るくする事が可能です

ちなみにISO400のした写真が以下になります。


ご覧の様に、背景がかなり明るくなっているのが分かります。

また、ストロボの電池を長持ちさせたいのでしたら、なるべくISO感度を上げ気味にした方が良いと言えます。

本項のまとめは以下の様になります。

①TTL自動調光において、ISO感度を変えても、ストロボが自動的に発光量を調整するので、画像の明るさは変わらない。

②部屋の明かりを取り入れて、背景をもっと明るくしたければ、ISO感度を上げれば良い。

③もしストロボの電池を長持ちさせたいのならば、ISO感度を上げれば良い。



撮影モードを変えたらどうなるか


今まではマニュアル(Mモード)で撮っていたのですが、撮影モードを変えたらどうなるでしょうか。

下の写真は、ISO感度100、絞りF4、シャッタースピード1/60、調光レベル0のまま、撮影モードを絞り優先(Aモード)とプログラム(P)に変えて撮ったものです。


撮影モードを変えて撮影した画像

これをご覧頂きます様に、撮影モードを変えても画像に全く変化はありません。

という訳で、TTL自動調光においては、撮影モードは何も影響しないと言えます。

と言うと、だから何だと思われるかもしれませんが、ここで重要なのはマニュアルモードであっても、絞り優先やプログラムと同様に自動的に適正露出になるという事です。

ただし絞り優先やプログラムにすると、シャッタースピードは強制的に1/60秒に固定されますので、ストロボ撮影においては、シャッタースピードを変えられるマニュアルにするのをお勧めします。

①TTL自動調光においては、撮影モードを変えても、ストロボが自動的に発光量を調整するので、画像の明るさは変わらない。

②すなわちマニュアルモードであっても、(シャッタースピードが同調速度以下であれば)、適正露出で撮れてしまう。

③なおプログラムモードにすると、強制的にシャッタースピードが固定されてしまうため、マニュアルモードにするのをお勧めする。



光量比を変えたらどうなるか


今までは単なるワイヤレスフラッシュ撮影だったのですが、次に光量比制御のワイヤレスフラッシュ撮影を行なってみます。

これによって、今まで不明だった親機のストロボの発光量が分かります。

光量比制御とは、ストロボの親機と子機の光量を調整する機能です。

例えば親機と子機の光量比を1:1とすると、両者の光量が同じになり、1:16にすると親機の光量が全光量の1/17で子機の光量が16/17の割合で光ります。

下の写真は、ISO感度100、絞りF4、シャッタースピード1/60、調光レベル0のまま、今までの単なるワイヤレスフラッシュと、光量比制御に変更して光量比を1:1から1:16まで変えて撮ったものです。


光量比を変えると、被写体の明るさは同じで背景が変化する

先ず左上のワイヤレスフラッシュは、本書の中で一番多く登場した画像で、基本画像と考えておいて下さい。

それに対して次の光量比1:1の画像は、基本画像より背景がかなり明るく写っています。

この理由は、親機のストロボの光量がアップしたためです。

ちなみに、テーブルの中央部にある白い点は、凸面鏡に写った親機のストロボの光です。

これを左の基本画像と比べて頂くと、より明るく光っているのが分かって頂けると思います。

ですので、それ以降の光量比1:2、1:4といくにつれて親機の光量は弱くなり、それに伴って背景も徐々に暗くなっていくのが分かります。

ただし親機と子機のストロボによって照らされる、被写体である花の明るさは一定です。

ところで、親機のストロボは徐々に弱くなっていくのは分かりましたが、子機のストロボの発光量はどうなのでしょうか?

写真を見ると同じ様に見えるのですが、一定なのでしょうか?

これを設定した比率から計算すると、親機と子機の発光量は以下の様になります。

種類\光量比 1:1 1:2 1:4 1:8 1:16
親機の光量 50% 33% 20% 11% 6%
子機の光量 50% 66% 80% 89% 94%
合計 100% 100% 100% 100% 100%

上の表をご覧頂きます様に、親機の光量が弱まるにつれて、当然ながら子機の光量は徐々にアップしている事が分かります。

さて、お待たせしました。

それでは、今までのワイヤレスフラッシュ(基本画像)における、親機と子機の光量比はどれくらいなのでしょうか。

先ほどの写真において、左上の写真と似た写真を比例制御の中から探すと、1:16とかなり似ているのが分かります。

という事は、単なるワイヤレスフラッシュを選択した場合、親機と子機の光量は1:16で制御されている事になります。

親機の光量がかなり抑えられているなと思われるかもしれませんが、ワイヤレスフラッシュにおいては、レンズ上部にある親機は控えめな存在にしている様です。

なおこの単なるワイヤレスフラッシュにおける親機の発光量は、恐らく他社機では異なると推測されます。


測光モードを変えたらどうなるか


最後は、測光モードを変えて画像が変わるかどうか確認してみましょう。

下の写真はいつもの通り、ISO感度100、絞りF4、シャッタースピード1/60、調光レベル0で、その状態で露出モードをマルチ、中央重点、スポット測光に変えて撮ったものです。


測光モードを変えても画像は変わらない

これも一目瞭然で、測光モードを変えても、画像は全く変化しません。

ですので、ワイヤレスフラッシュを行う場合は、測光モードはどこに設定しても構わないという事です。

推測ですが、TTL調光の場合はカメラ側が最適になる様な測光方式を採用していると思われます。


まとめ


いかがでしたでしょうか。

これでワイヤレスフラッシュに関する疑問がかなり解けたのではないでしょうか。

それでは、今までのまとめです。

先ず絞りや調光補正量を変えると、画像やストロボの発光量がどう変わるか一覧にすると以下の様になります。

可変項目 被写体の明るさ 発光量 外光の取り込み
調光補正量 変化する 変化する -
絞り 変化しない 変化する 開ける
シャッタースピード 変化しない 変化しない 遅くする
ISO感度 変化しない 変化する 高感度にする
撮影モード 変化しない 変化しない -
光量比 変化しない 変化する -
測光モード 変化しない 変化しない -

これをまとめると、被写体の明るさを変えるには、調光補正を調整するしかなく、他の項目を変えても変わらないと言えます。

ただし外光を多く取り込むには、絞りを開けるか、シャッタースピードを遅くするか、ISO感度を上げれば可能となります。

お役に立ちましたでしょうか?


応用


以上が分かった所で、早速それを応用してみましょう。

下の写真は、TTL自動調とワイヤレスフラッシュを使って、草と夕日を撮ったものです。


SONY α7R II、1/250、F10、ISO800

このままでも良いかもしれませんが、草はそのままで夕日だけをもっと暗くして撮りたいとします。

そのためには、どうすれば良いでしょうか?

それは簡単で、絞りを絞るか、シャッタースピードを上げるか、ISO感度を下げれば良いのです。


SONY α7R II、1/250、F16、ISO800

上の写真は絞りをF16まで絞った画像ですが、被写体の明るさはほぼ同じで、背景だけが暗くなったのが分かると思います。


予告


次回はワイヤレスフラッシュの後編として、被写体の位置を移動したら画像はどう変わるか、そしてFELロックを使ったらどういう効果があるかを試してみたいと思います。

   
HVL-20M      α99 II      α7R II

また併せて、小型ストロボのHVL-20Mや、SONYの代表的デジカメであるα99 IIやα7R IIを使って、ワイヤレスフラッシュの特性に何か違いがあるかどうかも調べてみようと思いますので、また覗いてみて頂ければ幸甚です。





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