α7S IIIのガッカリ14連発

2020/08/02:発行
2020/08/07:誤記訂正

目次


  1. はじめに
  2. 強気の値付け
  3. α7S IIIの特徴
  4. まとめ

1. はじめに


ついに待ちに待ったα7S IIIが発表されました。


α7S III

皆様の印象はいかがでしょうか?

期待通りでしょうか?

それともガッカリでしょうか?

残念のながら、本サイトの総論はガッカリです。

期待通りと思われら方には甚だ申し訳ないのですが、その理由を以下に述べさせて頂きます。


2. 強気の値付け


ガッカリした最大の理由は、その値付けです。

実際にはもう少し下がるのかもしれませんが、初値の予想価格は何と45万円前後だそうです。

ご存知の様に8K動画が撮れるEOS R5が46万円、2000万画素で常用ISO感度102400のEOS R6で30万円です。

だとしたら、α7S IIIの性能からすればせいぜい35万円前後が妥当でしょう。

EOS R5やEOS R6が出る前ならいざしらず、2機種が出た後でも、この性能でこの値付けで出してくるとは、全くの予想外です。

確かにここで本機だけ価格を下げては、他のαシリーズとの整合性が取れないと判断したのかもしれませんが、ここまで強気に出るとは思いませんでした。


3. α7S IIIの特徴


いきなり総括めいた内容から入ってしまいましたが、それではここからα7S IIIの特徴と、それらについてEOS R5とR6と比べた幣サイト独自の解説を述べさせて頂きます。

α7S IIIの特徴 解説
1 新開発のフルサイズ1210万画素裏面照射型CMOSイメージセンサー採用し、常用ISO 80~102400を達成。 幣サイト最大の落胆はISO感度です。

先代のα7S IIの常用ISO感度は、100~102400でした。

今回撮像素子が裏面照射型になったのに伴い、最大常用ISO感度は204800程度になると予想していたのですが、見事に裏切られてしまいました。

ちなみに最大常用ISO感度102400は、EOS R6と同じです。

α7S IIIにするかEOS R6にするか悩んでいた方は、これでEOS R6に決まりでしょう。

おまけに光をタップリ必要とする高画素機ならともかく、低画素機でありながら、なぜ最低ISO感度を敢て80に設定した(下げた)のでしょうか。

実際最低常用ISO感度をISO64まで下げて好評を得ているのは、ニコンのD850やZ7の様な高画素機(4800万画素)です。

もしかしたらNDフィルターを使う頻度を少なくできると思われるかもしれませんが、ISO80はISO100に対してたったの0.3段しか変わりません。

それくらいでNDフィルターを使う頻度が減る事はないでしょう。

ならば、むしろ最大常用ISO感度を0.3段上げて128,000に上げた方が、余程喜ぶ方は多いと思うのですが、いかがでしょうか?
2 従来比で約8倍の処理性能をもつ新開発の画像処理エンジンBIONZ XRを装備 8倍の処理性能と聞けば、大幅に性能アップしたと思われ事でしょう。

ところが、同じメーカーの従来機に比べてですから、8倍と言われても何の有難味(ありがたみ)もありません。

むしろ単純に4K60P動画機能だけで比較するとしたら、オーバーサンプリングする分EOS R6の方が1.6倍、EOS R5は4.2倍、α7S IIIより処理能力は上と言えます。
3 α7Sシリーズとして初めて、高いフォーカス精度と追随性をもつ像面位相差AFシステムを搭載。 像面位相差AFシステムは期待通りなのは間違いないでしょう。

ですが、今どきのミラーレス一眼であれば(Lumix以外では)像面位相差AF搭載は当たり前の事です。

むしろ先代までは単にコントラストAFだけだったのを、嘆(なげ)くべきでしょう。
4 画素加算なしのフルサイズ領域での全画素4K動画 全画素4K動画と聞くと、えらく優れた4K動画だと思われるのではないでしょうか。

ところが、先ほど触れました様にEOS R6は5.1Kのオーバーサンプリングから4K動画を生成し、EOS R5は何と8.2Kのオーバーサンプリングから4K動画を生成しているのですから、EOS R両機の方が画質が良いのは間違いありません。

さらに今回α7S IIIは像面位相差AFを採用したのに伴って、AFセンサーの数だけ画素欠損が生じますので、その分画素の補完処理が行われています。

すなわち所々にある(数十万とか数百万とかと言われるAFセンサーで生じる)黒点を、目立たない様に周囲の色で、1個1個リアルタイムで塗りつぶしているという訳です。

そうなると、当然ながら処理性能も一気に8倍程度に引き上げなければいけないのでしょう。

それに対して、EOS R系は全画素をAFセンサーとしても使えるデュアルピクセルCMOS AFを採用していますので、AFセンサーによる画素欠損は一切無いのです。

更にEOS R5は8Kも4KもUHDより幅の広いプロ用のDCI規格にも対応しているのに対して、α7S IIIは一般的なUHD規格のみです。

そんな訳で、これもEOS R5やR6が出た今となっては、α7S IIIの優位性とはお世辞にも言えそうもありません。
5 動画においては、15+ストップ(S-Log3動画撮影時。ソニー測定条件)の広いダイナミックレンジによって、階調豊かな映像を生み出す ダイナミックレンジについては、各社共通の測定方法が決まっておらず、この社内データを公表しているのは、ソニーとパナソニックとハッセルブラッドくらいしかないのではないでしょうか。

確かに低画素機ほどダイナミックレンジは必然的に広くなるのですが、他社機と正確に比べられないので、あーそーですかと言うしかありません。
6 4K 4:2:2 10bit対応 4K 4:2:2 10bit対応と書かれれば、恐らく大半の方が大したものだと思われる事でしょう。

何しろEOS R5もEOS R6も、それに対して特に目立った宣伝はしていません。

ところが、両機とも4K動画は4:2:2 10bit対応しているのです。

更にEOS R5においては、8K動画で12bitのRAWファイルでの録画が可能なのです。

すなわち8K 4:4:4 12bitの内部記録が可能なのです。

これだけでも凄いのですが、更にあります。

何とこのデータ容量が膨大な8Kの12bitRAWファイル(64GBのメモリーが3分でフル)での録画中に、再生に便利なMP4による4K(DCI)動画の同時録画まで可能なのです。

並みの開発部門であれば、マーケティング部門からのこの様な要望に対して、8KのRAW動画で手一杯なのでそこまでは勘弁してくれと言いそうなものですが、キヤノンの開発部門はそれを受け入れて達成してしまったのです。

本来α7S IIIの話をすべきなのですが、調べるにつれてEOS R5の凄さに驚かされます。
7 編集の自由度を高める16bit RAW出力 16bit RAW出力は確かにα7S IIIの優位性と言えます。

ですが、そのためには外部レコーダーを購入が必要ですので、一般ユーザーには余り関係はないでしょう。
8 従来比で約2倍の高速読み出しを実現し、ローリングシャッター歪みの低減を実現 ローリングシャッター歪みについても期待通りと言ってしまいそうですが、これもまたEOS R5やR6が出た今となっては、そうでもないのです。

誤記訂正

2020/08/07
大変申し訳ございません。

当初EOS R6もEOS R5も、”電子シャッターでストロボ同調速度1/250秒を達成している”と記述していたのですが、読者の方からご指摘を頂き、1/250秒を達成しているのは、電子シャッターではなく電子先幕シャッターである事にようやく気が付きました。

このため、下記取り消し線部分を削除させて頂きます事、何卒ご容赦願います。

EOS R6もEOS R5も、何と電子シャッターでストロボ同調速度1/250秒を達成しているのです。

ちなみに、α7もα9シリーズも電子シャッターではストロボ使用不可となっています。

これが何を意味するかと言えば、EOS R6とEOS R5のローリング歪は、(厳密には同じではないものの)一般的メカシャッター並みに抑えられているという事です。(詳細はこちら

実際、下にありますEOS R6の宣伝写真に使われているゴルフのスイング写真では、振り抜いた腕やクラブに目立ったローリング歪は見られません。


ローリング歪みが見られないEOS R6の宣伝写真

アンチディストーションシャッターを売りにしているα9シリーズでさえスキャン速度は1/150秒程度と言わていますので、1/250秒がいかに優れているかを分かって頂けると思います


α9の宣伝写真

そしてEOS R6の1/250秒でも十分凄いのに、4500万画素のEOS R5でも1/250秒を達成しているのはもう絶句としか言いようがありません。

またまた話が逸れてしまいましたが、
これまたα7S IIIの優位性とはとても言えません。
9 最大5.5段分の光学式5軸ボディ内手ブレ補正機能を搭載。 ボディ内手ブレ補正もEOS R6やEOS R5の最大8段分の手振れ補正を知ってしまうと、ガッカリでしょう。

おまけにEOS R6やEOS R5の場合、大半のRFレンズで8段分の手振れ補正を達成しているのに対して、α7シリーズはほんの一部のレンズで最大5.5段を達成しているにすぎないのです。
10 最大120p(約10%画角がクロップされる)のハイフレームレート映像を、高精細4K解像度でカメラ内部に記録できる。 120Pのハイフレームレート撮影については、生憎EOS R6は4K120P動画に対応していない(2KのFHDにのみ対応)ので、これは明らかにα7S IIIが優位です。

ですが、EOS R5はクロップ無しで4K120P動画に対応しています。
11 1時間を超える4K60p連続記録 4K60Pの連続記録時間ついては、下の表にある様にEOS R5やEOS R6に比べて明らかにα7S IIIの方が優れています。

機種 EOS R5 EOS R6
4K60P 35分
(23℃)
30分
(23℃)

ただしこれも何度も言います様に、EOS R6は5.1Kのオーバーサンプリング、EOS R5に至っては8.2Kのオーバーサンプリングから4K動画を生成していますので、EOS R両機が昇温で不利になるのは当然の事です。

これは画質を採るか、連続記録時間を採るかと言えば、大きな優位性とは言えないでしょう。
12 944万ドット、0.90倍の電子ファインダー搭載 α7S IIIの売りとなっている高解像度の電子ファインダーもどうなのでしょう。

従来ドット数ではLumix S1シリーズの536万ドット、ファインダー倍率はNikon Z6/Z7の0.8倍がトップでした。

ですが、1200万画素の低画素機にこんな高解像度で高倍率のファインダーが必要なのでしょうか?

当然ながらこの分コストはかさみますので、正直無駄としか思えません。
13 撮影の自由度を高めるバリアングル液晶モニター α7シリーズは従来チルト式の背面モニターだったのですが、ここにきてついにバリアングル式を採用してきました。

それ自体は市場の要望なので、止むを得ないとしても、一つ指摘しておきたいと思います。

それは背面モニターが180度開かないという事です。

仕様書によれば、その左右の開口角度は176度との事です。

これが何を示しているかと言えば、もし背面モニターを開いた状態でモニターを真正面からみると、カメラの光軸は4度右に傾いているという事です。

動画撮影なら多少は許せるでしょうが、静止画撮影でなるべく傾きを無くして撮ろうとすると、この4度の傾きはかなりのストレスになります。

ちなみにEOS R5とR6の両機については、仕様書に角度の記述は無いのですが、恐らく同じであろうEOS Rは175度ありますので、それから比べればα7S IIIは優れていると言えます。
14 価格 そしてトドメが(既にお伝えした)価格です。

1200万画素という低画素と高感度は非常に魅力的なのですが、EOS R5やEOS R6が出た後もにも関わらず45万円前後という値付けには、正直かなりガッカリです。


4. まとめ


それでは最後にまとめとして、星取表を眺めてみたいと思います。

# 項目 EOS R5 α7S III EOS R6
1 最大常用ISO感度
2 4K動画処理性能
3 像面位相差AFシステム
4 4K動画画質
5 ダイナミックレンジ
6 4K 4:2:2 10bit
7 16bit RAW出力
8 ローリング歪(誤記訂正)
9 手ブレ補正
10 4K120P
11 4K60P記録時間
12 電子ファインダー
13 バリアングルモニター
14 価格 46万円 45万円 30万円

これをご覧頂きます様に、α7S IIIがEOS R5やR6より秀でているのは、ダイナミックレンジ、16bit RAW出力、4K60P記録時間、電子ファインダー、バリアングルモニター(1度大きく開く)程度です。

なお上記はあくまでもα7S IIIの主要な特徴をEOS R5やR6と比べたものなのですが、これで45万円はどうみても高いと思われるのではないでしょうか。

そんな訳で幣サイトのお勧めは、断然EOS R6です。




α7S IIIのガッカリ14連発





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