背面モニターの可変方式の種類とその特徴

2020/04/24:発行

目次


  1. はじめに
  2. チルトとバリアングルのそれぞれの長短
  3. 縦開きバリアングル
  4. チルト式縦開きバリアングル
  5. フレキシブルチルト
  6. 3方向チルト
  7. チルト式横開きバリアングル
  8. 自撮り可能チルト
  9. まとめ
  10. おまけ

1. はじめに


デジカメの背面モニターの可変方式には、大きく分けて二つあります。

一つがチルト式で、もう一つがバリアングル式です。

チルト式は操作が簡単な反面、縦位置撮影と自撮りができないという問題があります。


        SONY α7 IIIのチルト式モニター

一方バリアングルモニターの場合、縦位置撮影と自撮りは可能なものの、操作が面倒なのとレンズ光軸とのズレが気になります。


EOS Rのバリアングルモニター

この様にそれぞれ一長一短があるため、各社とも知恵を絞って更に使い易いモニターの開発を進めています。

そんな訳で、それらにどんな種類があって、どんな特徴があるかを調べてみましたので、ここにご報告させて頂きます。


2. チルトとバリアングルのそれぞれの長短


それでは先ず、チルト式とバリアングル式の長短を表にまとめてみたいと思います。

チルト バリアングル 軍配
操作が簡単 操作が手間 チルト
レンズと光軸が同じ レンズと光軸が異なる チルト
縦位置撮影不能 縦位置撮影可能 バリ
自撮り不可 自撮り可能 バリ
表示面を格納できない 表示面を格納できる バリ
ストラップと干渉しない ストラップと干渉する チルト

これを見ると、両者は双極にあうと言っても良いほど、性格が異なります。

これらの異なる性格をどう克服しようとしているのか、各社の取り組みを、年代順に見ていきたいと思います。


3. 縦開きバリアングル


先ずは2009/5に発売されたたNikon D5000の横開きバリアングルモニターです。


縦開きバリアングルモニターを搭載したNikon D5000(2009/5発売)

ご存知の様に、一般的なバリアングルモニターは横方向に開いてから回転させますが、これは縦方向(下方向)に開いてから回転させます。

このメリットは、自撮りも可能で、且つ横位置撮影においてレンズの光軸と合致している事です。

ですので、チルト式と横開きバリアングルの良いとこ取りとも言えるのですが、2011/4に発売された後継機のD5100からは、横開きバリアングルに変更されています。

この理由ですが、縦位置撮影の場合レンズの光軸とズレる事と、三脚に据えるとモニターの可動範囲が大幅に制限されるためだとみて間違いないでしょう。

ちなみにこの縦開きバリアングルモニターは、2010/9にSONYから発売されたAマウント機のα55にも採用され、2013/8発売の後継機であるα58まで使われました。


縦開きバリアングルモニターα57(2012/4発売)の解説図

なおα58の生産中止に伴なってこの縦開きバリアングルも途絶えてしまったのですが、次にお話します様に、これを改良したチルト式縦開きバリアングルとして生き残っています。


4. チルト式縦開きバリアングル


次は、先ほどお伝えしたチルト式縦開きバリアングルです。(SONYでの名称は3方向チルト)

 
チルト式縦開きバリアングルを搭載したα99 II

これは先程の縦開きバリアングルに、チルト機構を組み合わせたものです。

これによって、あらゆる角度からモニターが見れると共に、三脚に据えた場合の制限も一切なくなりました。


α99 II等が採用している”チルト式縦開きバリアングル”

これを使うと、モニターで撮れないものは無いといった感じです。

ただし、モニターを縦に開いてから回転させる方式をとっていますので、縦位置撮影をしようとするとモニターとレンズの光軸がずれる事になります。


5. フレキシブルチルト


モニターの可変形式で最も異色なのが、Pentax K1 IIが採用しているフレキシブルチルトです。

 
Pentax K1 IIのフレキシブルチルト

これはモニター部のチルト機構とそれを支えるスライドする4本脚で構成されており、その動きを見るとかなり楽しめます。


後述する3方向チルトと比べると、モニターを左右両方にも向けられるという事から、自撮りはできないものの静止画撮影においてはベストと言えるのではないでしょうか。

ただしモニターを真下に向ける事はできません。


6. 3方向チルト


次にご紹介するのが、パナソニックのLumix S1が採用している3方向チルトです。(パナソニックの名称はチルトフリーアングル構造)

 
横向きにもチルトするLumix S1の3方向チルト

これも自撮りはできないのですが、これでしたら横位置、縦位置撮影の両方に対応できます。


Lumix S1Hのチルトフリーアングル構造

ただし先ほどご紹介したフレキシブルチルトを比べると、横方向は片側にしか向きません。

ただしコストは大幅に削減できますので、現実的に考えるとこれが静止画撮影の妥協点かもしれません。

ちなみにこの機構は、フジフィルムのX-T2、X-H1、X-T3も搭載しています。


X-H1の3方向チルト

なおこれに限った事ではなにですが、モニターを使って縦位置撮影をしようとすると、どうしても右手で操作し難いので、縦位置グリップを用意する事をお勧めします。


7. チルト式横開きバリアングル


フレキシブルチルトと同様、コストが掛かっているのは、Lumix S1Hの”チルト式横開きバリアングル”でしょう。

 
Lumix S1Hのチルトフリーアングル構造

これは動画と静止画を撮影する方にとって、理想の背面モニターと言えるではないでしょうか。

何しろチルト機構と横開きのバリアングルを合体させた様なものなのですから。

ただし横開きにする事で、モニターの回転軸に荷重が掛かる事から、チルト部の板金をかなり補強しなければなりません。

このため、コストも体積も重量もかなり増えますので、本機の様に高価で大柄が許容されるカメラにしか搭載できそうにありません。

なお、本機と前述のLumix S1との違いは、本機が動画用でLumix S1が静止画用という位置づけになります。

だったら本機は単純なバリアングルでも良かったのかもしれませんが、パナソニックとしては静止画撮影の操作性も落としたくなかった様です。

コストを掛ければ何でもできるとは言え、この姿勢には共感を覚えます。


8. 自撮り可能チルト


最近、良く見かけるのがこの自撮り可能チルトです。


下開きのオリンパスE-PL9

これでしたら、チルト式でありながら自撮りが可能になります。

これには2種類あって、モニターがカメラの下側に開くものと、上側に開くものがあります。


上開きのオリンパスα6400

これもまた一長一短があって、下開きの場合三脚に据え付けると自撮りができない反面、モニターのタッチシャッターを使えば腕が写り難いというメリットがあります。

一方上開きの場合、その逆になります。


9. まとめ


以上をまとめると、以下の様になります。

種類\項目 操作 光軸 縦位置 自撮 格納 ストラップ 三脚 ポイント
チルト × × × 4
バリアングル × × × 4
縦開きバリアングル 5.5
チルト式縦開き
バリアングル
6.5
フレキシブルチルト × × 5
3方向チルト × × 5
チルト式横開き
バリアングル
6.5
自撮り可能チルト × × 5

右横のポイントは〇を1点、△を0.5点、×を0点で計算しています。

これによって以下の事が言えます。

①最もポイントの高い可動式モニターは、チルト式縦開きバリアングルとチルト式横開きバリアングルである。

②最もポイントが小さいのは、当然ながらチルトとバリアングルで、尚且つ両者は〇と×が正反対になっていますので、同じ可動式モニターでありながら、特性は全く異なると言える。

③操作と光軸が×なのは、8種類ある可変方式の中で唯一バリアングルだけである事を考えると、どうしても安価に自撮りや縦位置撮影したい場合以外は、避けた方が良いかもしれない。


④モニターを使った撮影を多用している場合、一度高機能な可動式モニターを使ってしまうと、低機能のモニターに戻るのは難しいかもしれない。


10. おまけ


先日フジフィルムからX-T3の後継機として、ボディー内手ブレ補正を搭載したX-T4が発表されました。


従来の3方向チルトからバリングルモニターに変更されたX-T4

ところが、本機より背面モニターが従来の3方向チルトからバリングルに変更されたのです。

余計なお世話かもしれませんが、これはかなり混乱が起きる(従来のスチール写真派のユーザーから不評を買う)と思うのですが、どうなる事でしょう。

気掛かりです。




背面モニターの可変方式の種類とその特徴





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