Nikon D6のスペック大外れで気付いた事
(D6はひたすらプロ用一眼レフを目指していた)

2020/02/13:発行

はじめに


2020/2/12、ニコンの旗艦Nikon D6が正式に発表されました。

 
正式発表された6代目Nikon D6

予想価格は、税込79万8,000円との事です。

ご存知かもしれませんが、昨年本サイトでは本機のスペック予想を勝手に行ったのですが、どうやら的中率は極端に低い感じです。

では、どのくらいダメだったのか?

そして、その理由は何だったのか?

ならば、D6の実力はどの程度なのか?

本書を読み進むうちに、それらが徐々に分かってくると思いますので、是非最後までおつきあい頂ければ幸いです。


2,400万画素の裏面照射型撮像素子(大外れ)


初っ端から大外れです。

本サイトでは、Nikon Z6にも使われているソニー製の2,400万画素裏面照射型撮像素子を予想したのですが、何と先代のD5と同じ2000万画素の撮像素子を搭載してきました。


Nikon Z6に搭載されている2,400万画素の裏面照射型撮像素子

ライバルのEOS-1D IIIも新規ながら同じ2000万画素の撮像素子なのですが、これは一体どういう意味を持っているのでしょうか?

機種 NIKON 年代 EOS-1D 機種
NIKON D6 2,082万画素 2020 2,010万画素 EOS-1D X Mark III
NIKON D5 2,082万画素 2016 2,020万画素 EOS-1D X Mark II
NIKON D4S 1,623万画素 2014 1,810万画素 EOS-1D X

ニコンもキヤノンも、徹底的な市場調査を行って判断したのでしょうから、プロ達が求めるのは、2割増しの画素数よりも、従来並みの画素数と余裕のある高感度だったという事でしょうか。

いずれにしろ、デジカメの中枢とも言える撮像素子の画素数を間違えた事から、これから先が思い遣られる展開です。


常用ISO感度204,800(大外れ)


予想では、画素数は増え、更に裏面照射型撮像素子にした事で、常用ISO感度が2倍にアップすると予想したのですが、これも従来のままでした。

すなわち常用ISO感度は、ISO100~102400のままです。


フルサイズデジカメのISO感度スパン(最大ISO感度順)

ただしキヤノンのEOS-1X Mark IIIは、今回ようやくISO100~102400を達成しましたので、まだまだトップクラスです。

そこでまた、思い付いた事があります。

先ほどお伝えしたソニー製の2,400万画素裏面照射型撮像素子を使っている、α9、α7 III、Z6の最高ISO感度は51200です。

という事は、裏面照射型の撮像素子を使ったとしてしても、さすがのニコンとしてもこれ以上最大ISO感度を102400まで上げれなかったのではないでしょうか?

あらゆる商品において、仕様が先代より劣る事は絶対に許されません。

まして常用最大ISO感度が1段分落ちるとなると、それだけでプロは買い替えを躊躇するかもしれません。

このため、止む無く従来の2000万画素の撮像素子を流用したのではないでしょうか?

そう考えると、何となく辻褄が合う様に思えてきます。

もしそうだとしたら、スペック予想をしている段階でそれに気付くべきだったと言っても、後の祭りです。


電子シャッターで秒速20コマ以上の連写性能(大外れ)


続いては、電子シャッターによる連写性能です。

予想では、SONYの2,400万画素の裏面照射型撮像素子を採用するのに伴って、電子シャッターで秒速20コマ以上と思ったのですが、当然ながらこれも外れて、電子シャッターで秒速10.5コマとの事です。

ですので、D5のメカシャッターより遅いという結果ですので、これはあくまでも静音撮影用という事でしょう。

なおD6は、新たに2メガサイズで秒速60コマ、8メガサイズで秒速30コマの連写も可能になったとの事ですが、これはハイビジョン動画と、4K動画の画像切り出しが可能になっただけの事ですので、残念ながら特に画期的な事ではありません。


メカシャッターで秒速14コマの連写性能(やや当たり)


もし電子シャッターで秒速20コマ以上を達成すれば、メカシャッターは従来通り14コマ/秒と予想したのですが、根拠はともかく一応当たりました。

機種 最高速 AF追随
α9 II 20コマ* 20コマ*
α9 20コマ* 20コマ*
EOS-1D X Mark III 20コマ* 20コマ*
EOS-1D X Mark II 16コマ* 14コマ
NIKON D6 14コマ 14コマ
NIKON D5 14コマ 12コマ
EOS-1D X 14コマ 12コマ
α99 II 12コマ 12コマ
NIKON D4S 11コマ 11コマ
α7 III 10コマ 10コマ
D850 8コマ 8コマ
EOS 5D IV 7コマ 7コマ
フルサイズデジカメの連写速度 (*印は電子シャッターを示す)

ただし先代のD5はミラーアップして秒速14コマだったのに対して、AF/AE追従で秒速14コマを達成していますので、当たりを素直に喜ぶ事もできません。


チルト式背面モニター採用(大外れ)


これも意外でした。

D850までもがチルト式モニターを採用したのでD6も当然可動式モニターを採用すると思ったのですが、D6はまたも固定式モニターのままです。


D850の背面モニター

興味深いのは、D6の直接のライバルとも言えるEOS-1X Mark IIIのモニターも固定式です。

可変式にするとカメラ全体の強度が低下するという話もありますが、モニターの裏に筐体があるのは同じですので、それも考え難い事です。

なぜ両機とも可動式にしないのでしょう。

プロ達は、可動式を望んでいないのでしょうか?


GPS搭載(信頼度100%)


何の自慢にもなりませんが、GPS搭載は当たりました。


これだけヘッドの形状が変われば、誰でも分かります。


D850の光学ファインダー搭載(大外れ)


何とファインダーまで外してしまいました。

D850の光学ファインダーはD5よりも優れているので、当然D6もこれを採用すると思ったのですが、これも従来のままです。


D850の光学ファインダーはD5よりも優れている

ニコンとしては、作画を重要視する高解像度モデルのD850は大きめ、スピードを重要視するD6は小さめのファインダー倍率の方が良いと判断したのでしょうか。

機種 ファインダー倍率
α9 II 0.78倍
α9 0.78倍
EOS-1D X III 0.76倍
EOS-1D X II 0.76倍
NIKON D850 0.75倍
NIKON D6 0.72倍
NIKON D5 0.72倍
EOS 5D IV 0.71倍

ただし上の表にあります様に、EOS-1X Mark IIIはD850よりファインダー倍率は上です。

この辺は思想の違いが見て取れます。


ファインダービューのAF性能は現状維持(大外れ)


D6の予測の中で最も大きく外したのは、このAF性能だと言っていいでしょう。

本サイトとしては、ニコンはリソースをミラーレス一眼のZシリーズに振り分けるために、AF性能は基本的に現行のD5と同等レベルと予想しました。

ところが、ニコンがD6において最も力を注いだのは、このAF性能なのです。


D5とD6の測距ポイント

上の図にあります様に、D5より測距点の数は減った(153点→105点)ものの、全てをトリプルセンサー配列のクロスセンサーにしたのですから、その測距精度は5割以上向上したのではないでしょうか?

機種 位相差AF
(クロスセンサー)
瞳AF 最低輝度
EOS-1D X Mark III 191点
(155点)
中央1点デュアルクロス測距点
-4EV
NIKON D6 105点
(105点)
-4.5EV
NIKON D5 153点
(99点)
-4EV
EOS-1D X Mark II 61点
(41点)
-3EV

生憎測距ポイントの数ではEOS-1D X Mark IIIの方が上回っているものの、ピントが合った写真の歩留まりは恐らく両者は拮抗していると思われます。

ついでに両機とも一眼レフでありながら瞳AFにまで対応しましたので、ポートレートの合焦精度もα9を軽く抜いたと言えるかもしれません。

しつこい様ですが、縦線しか測距できないミラーレス一眼のAF性能は、クロスセンサー(あるいはデュアルクロスセンサー)を搭載した一眼レフより間違いなく数年遅れています。


ライブビューのAF性能はZ6と同等(大外れ)


ライブビューのAF性能については、Z6並みを予想したのですが、D5の撮像素子を流用した事に伴い、これも大外れです。

情けない事に、D6のライブビューでのAFは一昔のコントラスト方式ままです。

機種 像面位相差AF
(コントラストAF)
瞳AF
EOS-1D X Mark III 自動選択:525分割
任意選択:最大3869点
α9 693点
(425点)
NIKON D6 (コントラストAF)
NIKON D5 (コントラストAF)
EOS-1D X Mark II (コントラストAF)

ニコンは、D6はファインダー撮影に特化したカメラとして割り切った感じです。

ここまで割り切ったとなると、ニコンのプロユーザー達は殆どライブビュー撮影を行わないのではないでしょうか?

故にモニターも固定で全く問題ないのでしょう。


ボディー内手振れ補正搭載(大外れ)


外れの連続で次第に書くのも辛くなります。

D6には、Zシリーズ用に開発したボディー内手振れ補正ユニットを流用すると予想したのですが、これも採用されませんでした。

巷ではボディー内手振れ補正は絶賛されていますが、プロの世界ではその実力のほどは知られており、一眼レフではファインダーで手振れ効果が確認できなくて、且つ衝撃や振動に不安があるボディー内手振れ補正は不採用になったのでしょう。

実際、EOS-1X Mark IIIも不採用ですので、プロの世界ではボディー内手振れ補正は然程重要視されていないのでしょう。


動画機能向上(大外れ)


よもやこれまで外すとは思っていませんでした。

D5の動画機能は、EOS-1D X Mark II と比べると多少見劣りする所があったので、動画性能はEOS-1D X Mark II 並みに高めると予想していました。

例えば、5Dの4Kは一般的なUHDTV(3840×2160)ですが、EOS-1X Mark IIの4Kは映画に対応したより高精細のDCI 4K(4096x2160)に対応しています。

さらに5Dは4Kでのフレームレートが最大30Pですが、EOS-1X Mark IIは最大60Pです。

またフルHDで5Dは最大60Pで撮影できるのに対して、EOS-1X Mark IIは最大120Pで撮れますので、スローモーションも可能です。

更にEOS-1X Mark IIは4K画像の切り出し機能を持っていますので、885万画素で60コマ/秒の連写ができる事になります。

ところが、D6の動画性能で向上したのは、下の表の様に動画の切り出しが可能になっただけです。

機種 動画機能
EOS-1D X III 動画記録サイズ:
5.5K RAW(5472×2886)、4K DCI(4096×2160)、4K DCIクロップ(4096×2160)、4K UHD(3840×2160)、Full HD(1920×1080)
フレームレート:
5.5K RAW(5472×2886)、4K DCI(4096×2160)、4K DCIクロップ(4096×2160)、4K UHD(3840×2160)、Full HD(1920×1080)
EOS-1D X II 4K(4096×2160):60p/50p/30p/25p/24p
Full HD(1920×1080):120p/60p/50p/30p/25p/24p
4K画像の切り出し(885万画素で60コマ/秒)
NIKON D6 ・3840×2160(4K UHD):30p/25p/24p
・1920×1080:60p/50p/30p/25p/24p
・1280×720:60p/50p
・1920×1080クロップ:60p/50p/30p/25p/24p
※60p:59.94fps、50p:50fps、30p:29.97fps、25p:25fps、24p:23.976fps
※標準/★高画質選択可能(3840×2160は★高画質のみ)
4KとFHD画像の切り出し
NIKON D5 ・3840×2160(4K UHD):30p/25p/24p
・1920×1080:60p/50p/30p/25p/24p
・1280×720:60p/50p
・1920×1080 クロップ:60p/50p/30p/25p/24p
※60p:59.94fps、50p:50fps、30p:29.97fps、25p:25fps、24p:23.976fps
※標準/★高画質選択可能(3840×2160は★高画質のみ)

これはかなりびっくりではないでしょうか。

ただし、ここまで書いてきてようやくD6の本質が分かってきましたので、それについては次のまとめで述べたいと思います。


まとめ


以上を星取表にまとめると、以下の様になります。

項目 Nikon D6の予想スペック 予想 実際
撮像素子 2,400万画素の裏面照射型撮像素子 外れ D5流用
ISO感度
(拡張)
100~204,800
(50~3,280,000)
外れ 変更無し
常用最大102,400
連写速度(電子) 20コマ以上/秒 外れ 10.5コマ/秒
連写速度(メカ) 14コマ/秒 当たり ただしAF追随
背面モニター タッチパネル3.2型236万ドットチルト式 外れ モニター固定
GPS 新規搭載 当たり 新規搭載
光学ファインダー 倍率0.75倍 外れ 0.72倍
ファインダー
ビューAF
D5と同等 外れ 大幅改善
ライブビューAF Z6と同等 外れ 変更無し
ボディー内手振れ補正 新規搭載 外れ 非搭載
動画 4K/60P等(EOS-1D X Mark II と同等) 外れ 動画切り出しのみ
Nikon D6予想の予想星取表(太字はD5からの変更予想個所)

これをご覧いただきます様に、D6のスペック予想は大外れという結果です。

(聞きたくないでしょうが)言い訳をさせて頂きますと、予想が外れた大きな理由は、本書はD6がα9と同じ撮像素子を利用する事で、D6がα9の機能を取り込んでくると予想してしまったからです。

ところがニコンは、(α9は全く眼中になく)D6においてはどんな条件でも常にピントが合う、プロ用の一眼レフをひたすら追求していたのです。

そしてD6にとって、さほど重要でないライビューの撮影機能や、動画機能に殆ど手を付けなかったという訳です。

念のために捕捉しておきますと、ニコンは、このライビューや動画機能については、ミラーレス一眼のZシリーズで対応する方針なのでしょう。

これだけ基本コンセプトを読み間違えれば、スペック予想が外れるのも当然ですが、同時にニコンの潔さに感服です。

ちなみに、これで各社のプロ用モデルの違いが、以下の様にかなり鮮明になりました。

SONY α9 II:当然ながらミラーレス一眼としてのプロ機を目指したモデル

EOS-1X Mark III:ミラーレス一眼と一眼レフの良い所取りを目指したモデル

Nikon D6:一眼レフとしてのプロ機をひたすら追及したモデル


α9 II

EOS-1X Mark III

Nikon D5
税込79万8,000円

Nikon D6

巷では今後レンズ交換式カメラはミラーレス一眼に向かうと思われていますが、このD6とEOS-1X Mark IIIのAF性能がその流れに竿さす事になるでしょうか。




Nikon D6のスペック大外れで気付いた事(D6はひたすらプロ用一眼レフを目指していた)





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