(EOS RP vs α7 III)
EOS RPの瞳AF性能

2019/5/10: 発行
2019/5/22: 発行

はじめに


2019年3月14日、大方の予想を覆してEOS Rの廉価版であるEOS RPがリリースされました。


EOS RP ゴールドとブラック

巷では瞳AFの性能は、α7 IIIの方が上と言われていますが、本当にそうなのでしょうか?

本書では実際にEOS RPを使ってみて、その瞳AFの性能を探ってみましたので、その結果をご報告したいと思います。

と思って書き始めたのですが、気が付くと操作性の話が多くなってしまいました。

とは言え、今後ミラーレス機を購入するのに際して、SONYにするかCanonにするか悩んでいる方にはネットには一切語られない情報が満載ですので、是非参考にして頂ければと思います。


仕様


それでは先ず、EOS RPの瞳AFの性能を仕様書から探ってみたいと思います。

ご存知の様に、EOS RPはキヤノン独自の全画素子をAFセンサーとして使用できるデュアルピクセルCMOS AFを採用しています。


EOS RPに搭載されたデュアルピクセルCMOS AF

このため、2600万画素のEOS RPでさえ4779ポイント(キヤノンでは4779ポジションと表記)の像面位相差AF測距点を有しています。


EOS RPのAF測距点

一方2400万画素のα7 IIIは、数万個のAFセンサーを撮像素子上に配置して、693ポイントの像面位相差AF測距点を有しています。


α7 IIIの測距点

こう書くと、2400万画素の撮像素子に更に数万個のAFセンサーを埋め込んだ様に思ってしまいますが、実際は2400万画素の内の数万個の画素の片側に遮光板を設けてAFセンサーにしているのです。


SONYを含め一般的な像面位相差AFにおけるAFセンサーの画像情報は欠損している

ですので、これらのAFセンサーの画像情報は欠損しているのを忘れてはいけません。

またα7 IIIの場合、更に425ポイントのコントラス検出のAF測距点を併用するハイブリッド方式を採用しています。

ハイブリッドAFと言うと聞こえは良いのですが、一般的な像面位相差AFでは暗所での精度が不十分なので、止む無くコントラス検出のAFを併用している事を知っておかなければなりません。

いずれにしろAFセンサーの数から言っても、測距点の多さから言っても、AFの精度と暗所性能についてはEOS RPの方が格段に優れているのは間違いないと言えます。


上半身以上でしか瞳AFは使えない


そんな訳で、期待に胸を膨らませてEOS RPを使ってみた所、(カメラの操作に慣れていないせいもあるのですが)なかなか安定して瞳を検知してくれません。

設定がおかしいのかと色々いじった挙句にようやく分かったのが、何の事はなく被写体(人物)がファインダー上で上半身以上の大きさにならないと、瞳を検知してくれないのです。


EOS RPは被写体が上半身以上にならないと瞳を検知しない

それに対してα7 IIIは、全身程度の大きさでも、十分瞳検知が機能します。


α7 IIIは被写体が小さくても瞳を検知する

さすがにα7 IIIの瞳AFは、キヤノンより数年分のアドバンテージがあるなと感心したものの、よくよく考えるとどうも変です。


AF測距点


先ほどα7 IIIの像面位相差AF測距点は、693ポイントとお伝えしました。

その測距点を画像で表すと、以下の様になるのです。


α7 IIIの位相差測距点(AF可能エリア93%)

これをご覧になると、えーと思われないでしょうか?

このマス目はあくまでも測距可能エリアと測距ポイントの数から導いた便宜的なものなのですが、これでは瞳AFと言うより、目の周囲AFという感じです。


α7 IIIのAFセンサーは瞳を捉えきれていない

それに対してEOS RPの4779ポイントですと、以下の様になります。


EOS RPの位相差測距点(AF可能エリア88%)

これでしたら、確かに瞳AFと言われても、十分納得がいきます。


EOS RPのAFセンサーは十分瞳を捉えている

本サイトでは以前よりSONYの瞳AFは精度が悪いと散々お伝えしておりましたが、この画像を見て頂ければ、すんなりそれをご納得頂けるのではないでしょうか。

当然ながら像面位相差AFセンサーは光のズレ量から距離を算出しますので、AFポイントの大きさだけで精度が決まる訳ではありません。


一般的な像面位相差AFにおける光束とAFセンサーの位置関係

ですが、瞳部分を重点的に測定するのと、瞳以外のエリアも測定して距離を算出する(もしくは瞳以外の距離を測定する)のとでは、前者の方が瞳に対する測定精度が高いのは間違いないでしょう。

さらにEOS RPはデュアルピクセルCMOS AFを採用していますので、AFセンサーが多い分だけ光のピークをより正確に捕える事が可能ですし、光量の少ない暗所でのAFも優位になります。

余談ですが、試しにEOS RPにRF 24-105mm F4を付けて真夜中に星を撮ってみた所、本当に星にピントが合ってしまいびっくりしました。

EOS RPの低輝度合焦限界EV-5は、ダテではありません。

話が逸れてしまいましたが、実際の所、顔さえ認識できば、瞳の位置は自(おの)ずと推測できます。

にもかかわらずEOS RPが小さな被写体において瞳を認識しないのは、(瞳認識能力がα7 IIIより劣っているのではなく)確実に瞳にピントを合わすには、瞳よりAFの検知範囲が小さくなければいけないとの、当然の理屈に基づいているからなのでしょう。

もしそうだとしたら、キヤノンの考えに100%賛同です。

ただし瞳AFが働くのは(AF精度の関係で)上半身以上の撮影からだと、一言マニュアルに書いておいてくれればもう完璧です。


瞳AF合焦表示


EOS RPの瞳AFの精度についてご理解頂いた所で、ついでにこの話もしておきましょう。

SONYのα7シリーズを使った事がある方でしたらご存知だと思いますが、瞳AFを使って瞳に合焦させると、その瞬間ピッと音がして瞳の周囲に緑の枠が表示されるのですが、直ぐにその表示は消え失せ、それよりもっと大きな顔認識の緑枠に変わるのです。




α7 IIIの瞳AF合焦を示す緑枠は直ぐに消え失せ、顔認識の緑枠に変わる

ですので、もしかしたらシャッターを押す前にピントが外れたののではないかと、一瞬不安になります。

瞳AFの合焦マークを直ちに消す理由は不明ですが、もしかしたらピントが合ってない可能性があるぞと、撮影者に知らしめているのではないかと勘ぐってしまいます。

さもなければ、瞳AFという程の精度ではないとのSONY技術者のメッセージ(後ろめたさの表れ)ではないか、とさえ思ってしまいます。

それに対してEOS RPにおける瞳AFの合焦マーク(緑枠)は、シャッターを押すまでしっかり表示されています。

たったそれだけの事かと思われるかもしれませんが、精神衛生上非常に重要な事です。。


瞳AFと顔AF


さて今まではEOS RPの瞳AFを褒めちぎってきましたが、これからは少し辛口コメントです。

先ず気になったのが、瞳AFと顔AFの関係です。


EOS RPのAF方式の選択画面

上はEOS RPのマニュアルに記載されている、AF方式の選択画面から”顔+追尾優先AF”を選択している場面です。

この画像にはありませんが、この状態でさらにINFOボタンを押すと、”顔+追尾優先AF”から”瞳+追尾優先AF”に変わって、顔のマークが瞳のマークに変わります。

そのどこが問題なのかと言われるかもしれませんが、この顔AFと瞳AFの二つが存在する事が問題なのです。

何故ならば、仮に”瞳+追尾優先AF”に設定していても、被写体が小さければ顔AFが働きます。

そして被写体が大きくなれば、瞳AFが働きます。

当然ながら、”顔+追尾優先AF”のままでしたら、被写体が大きくなっても瞳AFは働きません。

ですが、そんな必要があるでしょうか?

人物撮影の場合、レンズの絞りを開けようが、絞ろうが、顔全体にピントを合わせるより、むしろ瞳にピントを合わせた方が、より精度の高いピント合わせが可能だというのが本書の考えです。

ですので、本書としては”顔+追尾優先AF”と”瞳+追尾優先AF”の2種類のAFは不要で、”瞳+追尾優先AF”のみにすべきだと思うのですが、いかがでしょうか?


瞳AFより顔AFの方が上


そうは言っても、どうしても”瞳+追尾優先AF”は使いたくないから、”顔+追尾優先AF”のみを使いたい方も中にはいらっしゃる事でしょう。

そのためには、両者を選択できる様にしておくのは、ユーザー視点からすれば妥当だと言われるかもしれません。

ですが、そうだとしてももう一つの問題があるのです。

EOS RPの場合、”顔+追尾優先AF”と”瞳+追尾優先AF”は対等の立場ではなく、”瞳+追尾優先AF”は”顔+追尾優先AF”の従属機能になっているのです。

言葉にすると分かり難いので、図にすると以下の様になります。

AF方式ー ー顔+追尾優先AF ー瞳+追尾優先AF
-スポット1点AF
ー1点AF
ー領域拡大AF
ー領域拡大AF(周囲)
ーゾーンAF

ですので、”顔+追尾優先AF”を選択するには、先ず”顔+追尾優先AF”を選択して、次に”顔+追尾優先AF”に変更するために、もう一つ瞳AF用のボタンを押さなければならないのです。

おそらくこの理由は、APS-Cサイズのミラーレス機であるEOS-M5で”顔+追尾優先AF”を設けて、
それに今回新たに”瞳+追尾優先AF”を追加したのに伴い、こんな従属関係ができたのでしょう。

ですが誰がどう考えても、顔AFより瞳AFの方が優先度が高いので、是時ともこんな関係は是正してほしいものです。

ちなみにα7シリーズにも顔AFは搭載されていますが、それとは関係なく瞳AFを独立して起動できます。


瞳AFのカスタムキー登録

2019/5/22追記

本機の瞳AFの問題は、更にあります。

α7 IIIの瞳AF(或いは顔AF)は、AF方式(SONYではフォーカスエリアと呼称)が中央、ゾーン、ワイド等に関わらず、顔もしくは瞳を認識すれば起動します。


α7 IIIのAF方式

ところが本機の場合、フォーカス方式を”顔+追尾優先AF”に設定していないと、瞳AFも顔AFも決して起動しないので。


EOS RPのAF方式

それだけでしたら大した問題ではないのですが、問題は顔を認識しないときです。

フォーカス方式を”顔+追尾優先AF”に設定していながら、万一顔を認識しないと、AF領域を143分割した自動選択AFになり、AFがとんでもない所に平気でフォーカスを合わせるのです。

例えばα7 IIIでしたら、AFを中央に設定して顔を認識しなければ、中央のAFポイントが働くだけです。

ところが本機の場合、どうやら全てのAFポイントが一生懸命顔を探している様で、その状態でシャッターボタンを半押しすると、被写体と全く関係のない個所に合焦するのです。

顔を認識できないのなら、せめて”1点AF”になってくれればリカバーも簡単なのですが、全域AFとなるとそうもいきません。

となると、またメニューからAF設定を変更しなければならないのですが、良い手が見つかりましたので、後ほどそれをお伝えしないと思います。


瞳AFのカスタムキー登録


上記の様に瞳AFの選択方法にかなり不満を持ってマニュアルに目を通していると、”瞳AF”をカスタムキーに登録できる事を知りました。

早速カスタムキーに”瞳AF”を登録して、AF方式を1点AFにした状態でそのキーを押してみたのですが、全く何も変わりません。

再度マニュアルを読み直してみると、AF方式が”顔+追尾優先AF”になっている場合にこのキーを押すと、”瞳+追尾優先AF”になるだけの事でした。

ちなみにメインメニューの中にも”瞳AF”の項目があるのですが、これもまた”顔+追尾優先AF”の場合に”瞳+追尾優先AF”にするだけです。

これだけ”瞳AF”とありながら、なぜ一発で”瞳+追尾優先AF”を呼び出せないのか、愚痴の一つも言いたくなる気も分かって頂けるのではないでしょうか。


未完成の追尾優先AF


さて、今までは”顔+追尾優先AF”、或いは”瞳+追尾優先AF”と気楽に呼んでいましたが、この後ろに付いた”追尾優先AF”もこれまた曲者(くせもの)です。

例えば”顔+追尾優先AF”と聞けば、誰しも顔しか追尾しないと思う事でしょう。

所がさにあらず、何かの拍子に人物の腕や足(さらには背景)を捕捉したら、(目の前に顔があるにもかかわらず)解除ボタンを押すまでそれをしつこく追尾し続けるのです。


”顔+追尾優先AF”に設定しても顔以外も追尾する

この現象は強い逆光の時や電源を入れ直したときに良く発生しますが、それ以外の場面でもちょくちょく発生します。

何かを捕捉したら、それが顔かどうか途中で判定すれば良さそうなのですが、それも行っていない様です。

と思っていたのですが、その後使っていく内に、顔を認識するとターゲットを顔に変えてくれるのが分かりました。

ただし顔認識の能力は、SONYより劣るのは間違いない感じです。

先ほどお伝えした様に、”顔+追尾優先AF”はEOS-M5から搭載された機能ですので、完成度はまだまだといった感じです。

また顔以外も捕捉できるのならば、”顔AF”と”追尾優先AF”を別々にすればと思うのですが、キヤノンのR&Dはそう考えていない様です。

ちなみにα7 IIIにも追尾機能は備わっているのですが、瞳AFとは独立しています。

ただしターゲットの追尾機能を使った場合は瞳AFは使えませんので、もしかしたらEOS RP方式(顔認識と追尾機能を一体化する)の方が理に叶(かな)っているのかもしれません。

ところで、この現象が連続して発生すると、止む無く昔ながらの”1点AF”を使って撮っていたのですが、ようやく打開策が見つかったので次にご紹介したいと思います。


タッチ操作


瞳AF設定中に、瞳はおろか顔すら認識しない、或いは何かの拍子でEOS RPが顔以外の追尾を始めたときの対応策ですが、それはタッチ操作です。

万一顔以外を追尾した場合、背面モニターをタッチするとオレンジ色の丸い枠が現われます。


追尾枠はタッチ操作で移動できる

それをドラッグして、顔に持っていくと顔の追尾を始めてくれます。

先ほど顔以外の追尾をちょくちょく開始するとお伝えしましたが、もしかしたら何かの拍子でモニターに触れた事も原因の一つだったかもしれません。


表示されない水準器と失われた拡大表示


これで瞳AFの操作性に関する愚痴はひと段落です、と言いたい所ですが、残念ながらそうはいきません。

実は”顔+追尾優先AF”(及び”瞳+追尾優先AF”)にすると、水準器が表示されなくなるのです。



人物撮影で水準器を使うのは稀だと思われるかもしれませんが、屋外の水平線が入る撮影ではかなり頻繁に使います。

また背面モニターを使ったハイアングルやローアングルでは、カメラの傾きを抑えるために必須とも言っても良いくらいです。

EOS RPの使い始めは、いきなり水準器が表示されなくなって、バグだと勘違いして何度もカメラをリセットしたのですが、何と”顔+追尾優先AF”のせいだと知って唖然としました。

またさらに、”顔+追尾優先AF”(及び”瞳+追尾優先AF”)にするとライブビューの拡大表示もできなくなります。

恐らく処理能力の制限ではないかと思うのですが、早急に改善して貰いたいものです。


結論


いつの間にかに操作性の愚痴ばかりになってしまいましたが、結論です。

本サイトの記事で何度かお伝えしました様にα7 IIIの瞳AFは大口径レンズを開放で使うだけの精度は無かったのですが、EOS RPはそれより遥かに実用性がありそうです。


EOS RP + RF50mm F1.2

ただし、今の所以下の問題があります。

①瞳AFが顔AFの下に位置にしている。(本書としては、瞳AFがあれば顔AFは不要)

②瞳AFをボタン一つで呼び出す方法がない。

③追尾優先AFが不安定。

④顔が認識できないと、あらぬ所にピントを合わせる。

⑤上記③④については、タッチ&ドラッグで対応可能。

瞳AFを使うと、水準器と拡大表示が使えない


         

いずれにしろ、今回EOS RPにおける瞳AFの使い方と、それがかなり使える事が分かってきましたので、今後更に使い込んで結果をお伝えしたいと思います。

EOS RPの話は、これから暫く続きますので、お楽しみに。




EOS RPの瞳AF性能




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