電子シャッターで蛍光灯のフリッカーを完全に消す方法

2021/02/21:発行
2021/02/22:追記


はじめに


こう思われている方は、いらっしゃらないでしょうか?

なぜ電子シャッターにすると、メカシャッターよりフリッカーが目立つのだろう。


電子シャッターで撮るとメカシャッター以上にフリッカーが目立つ

画像歪みと同様に電子シャッターはスキャン速度が遅いからなのだろうか。

また、どうやればフリッカーが目立たない様にできるのだろう。

取り敢えず蛍光灯であれば、東日本では50Hz、西日本では60Hzで点滅しているので、余裕を見て1/30秒で撮っておけば何とか防げるので、それで撮っておこう。

これも大きな間違いだとは言わないものの、正しくないという意味では間違いだと言って良いでしょう。

何しろフリッカーのムラを目立たなくするのではなく、消してしまう事が簡単にできるのですから。

そんな訳でその方法を理論的に且つ分かり易くご説明しますので、是非最後までお付き合い頂ければと思います。


なぜ電子シャッターはフリッカーを拾い易いのか


これは何方も経験済みの事でしょう。

なぜだか分からないが、電子シャッターは、メカシャッターよりフリッカーが目立つ。

この理由を、蛍光灯を例に分かり易くご説明したいと思います。

蛍光灯の点滅回数

下は東日本(50Hz)の商用電源の1波長を表します。


東日本(50Hz)の蛍光灯の入力電源の1波長

この50Hzの電源が入力されますと、蛍光灯はこの1波長の中で、プラスとマイナスの電圧が高くなる所で2回明るくなります。

なお当然ながら実際の光量はこんなに綺麗な波形にはならず、最大光量は電圧ピークの手前にあるのですが、大勢に影響ないので本書ではこのままこの波形を使ってご説明させて頂きます。

肝心な事は、一つ一つ山の形が同じだという事です。

また50Hzという事は、1秒間に50回この1波長がありますので、1秒間にこの蛍光灯は100回明暗を繰り返す
事になります。

また西日本の60Hzであれば、1秒間に120回点滅する事になります。

ここまでは宜しいでしょうか?

メカシャッター

ではこの蛍光灯を、一般的な幕速度1/250秒のメカシャッターを備えたカメラを使って、シャッタースピード1/500秒撮った場合を考えてみます。

この場合、下の図にあります様にシャッタースピードが1/250秒を超えると(幕速度は同じまま)スリットの幅を狭めるだけなので、1枚撮るのに掛かる時間は1/250秒のままです。


シャッタースピードが1/250秒以下の場合、シャッターが1度全開する


シャッタースピードが1/250秒を超える場合、シャッターは全開せずスリットが狭くなる

すなわち、シャッタースピードが1/500秒でも1/1000秒でも、ある1点での露光時間は当然シャッタースピードと同じになりますが、画面の上の点と下の点では1/250秒の時間差があります。

この1枚撮るのに掛かる時間1/250秒(0.04秒)を、先ほどのチャートに重ねると以下の様になります。


幕速度1/250秒のメカシャッターで撮った場合のタイミングチャート

上の図の様に、蛍光灯が暗い時にシャターボタンを押すと、撮り始め(上部)は暗くて徐々に明るくなっていく写真になります

また、もしウマい具合にシャッターボタンを頂上の手前(もしくは谷の手前)で押したら、下の図の様に最も明るくてムラの少ない部分で写真が撮れる事になります。


幕速度1/250秒のメカシャッターで最も明るくムラの無く撮れる場合

最近のカメラが搭載しているフリッカーレス機能は、このフリッカーの周期をカメラが自動的に検出して、この山や谷の明るい部分でシャッターを開ける様にしているという訳です。

フリッカーレス機能を使うと、シャッターのタイムラグが発生したり、連写速度が遅くなるのはこのためです。

ついでにお伝えしておくと、このフリッカーレス機能が働くのは、フリッカー(点滅)の周期が100Hzもしくは120Hzのときだけです。

なお1/500秒でも1/1000秒でも、1枚撮るのに掛かる時間は同じ1/250秒(0.04秒)ですが、シャッタースピードが高速になるほどスリットの幅が狭くなるので、濃度ムラが目立つ(クッキリする)事になります。


電子シャッター

それでは次に、電子シャッターの場合です。

この場合、1枚撮影するのに要する時間は、シャッタースピード+スキャンスピードになります。(詳細はこちら

このため、先ほどのメカシャッターと比べ易い様にここではシャッタースピード1/500秒(0.002秒)、スキャン速度(一般的には1/30秒前後)は少し速めの1/60秒(0.016秒)としておきます。

これを先ほどのタイミングチャートに追加すると、以下の様になります。


シャッタースピード1/500秒+スキャン速度1/60秒の電子シャッターで撮った場合

これをご覧頂きます様に、先ほどのメカシャッターは1波長の20%の範囲しか写さなかったのに対して、電子シャッターの場合は1波長の90%の範囲まで写してしまうのです。

ですので、どのタイミングでシャッターボタンを押そうが、画像の上から下までの間に必ず明暗明の濃度ムラが写ってしまうという訳です。

またこの濃度ムラは、メカシャッターと同様にシャッタースピードが早くなるほどクッキリ現れる事になります。

これで電子シャッターがフリッカーの影響を受け易い理由を、スッキリ分かって頂いたのではないでしょうか。


高速スキャン速度の電子シャッター

ここまで分かってきたら、電子シャッターのスキャン速度がもっと早くなったらどうなるか知りたくなってくる事でしょう。

そんな訳で、スキャン速度がメカシャッターの幕速度と同じ1/250秒になった場合を、先ほどのチャートに入れてみます。


シャッタースピード1/500秒+スキャン速度1/250秒の電子シャッターで撮った場合

これをご覧頂きます様に、この場合は1波長の30%まで撮影範囲が狭くなりましたので、先ほどの90%よりムラの程度はかなり良くなります。

ただしメカシャッターは20%ですので、それを超える事はできないものの、電子シャッターのスキャン速度が速くなれば、フリッカーによるムラを低減できるのは間違いありません。

以上の事から、メカシャッターの幕速度や電子シャッターのスキャン速度が遅くなると、ムラの本数が増え、シャッタースピードが速くなるとそのムラがクッキリ見えるという事になります。

逆に言えば、幕速度やスキャン速度が速くなればムラの数は減り、シャッタースピードが遅くなればムラのコントラストは低下する事になります。

では電子シャッターでフリッカーのムラを低減するには、やっぱりスキャン速度を早くするか、シャッタースピードを遅くするしかないではないかと思うわれる事でしょう。

ところが、本題はこれからなのです。

何しろ本書の表題は、電子シャッターで蛍光灯のフリッカーを完全に消す方法なのですから。


蛍光灯のフリッカーを消す


今まではフリッカーによるムラを低減させる方法をお伝えしてきましたが、所詮ムラが出る事に変わりはありません。

本書がお伝えしたいのは、それを消す方法なのです。

ムラを低減するので精一杯なのにどうやってそんな事ができるのだと訝(いぶか)られるかもしれませんが、それは非常に簡単な事なのです。

先に結論をお伝えしますと、シャッターの種類に関わらず東日本ならばシャッタースピード1/100秒、西日本ならば1/120秒で撮る

たったそれだけの事なのです。

なぜそうなのるのか、先程と同じスキャン速度1/60秒でシャッタースピードを1/100秒にした電子シャッターの場合でご説明しましょう。



上のチャートを見て頂ければ、もう説明は不要ではないでしょうか。

既にお気付きの様に、シャッタースピードが1/100秒という事は、1ラインの露光時間が1波長の丁度半分になります。

という事は、撮像素子から読み込まれた1ラインは、何ライン目であろうと常に半波長(一山)分の明かりを受光するのです

これは下の図にあります様に、半波長であれば波のどこで切り取っても山の面積(光の量)が同じになるという事でご理解頂けるのではないでしょうか。


シャッタースピードが半波長だと、何処を切り取っても同じ明るさ(面積)になる

なお以前、光量の波形はこんなに綺麗な形にはならないとお伝えしましたが、たとえどんなに歪(いびつ)な形状であっても、山の形が全て同じであればこの関係は成り立ちます。

ただし、1/100秒(0.001秒)より短いと、こんな事には決してなりません。

このため、1ライン目から最後のラインまで同じ明るさで写るので、撮った画像に一切フリッカーに伴うムラは発生しないのです。

これはスキャン速度が遅かろうが速かろうが、メカシャッターだろうが電子シャッターだろうが、ましてやシャッターボタンを押すタイミングにも一切関係しないのです。

すなわち、どんなカメラであろうと、東日本ならばシャッタースピード1/100秒、西日本ならば1/120秒で撮れば蛍光灯のフリッカーは完全に消えて無くなるのです。

そう言うと、商用電源の周波数がそんなに正確なのかと思われるかもしれませんが、公称値は±0.4%ほどなれど、実際はもっと正確でその気になれば時計の基準クロックとして使える程精度は高いのです。(これは目立たないながらも、日本の工業製品の優秀さにも関係します)

更に電子シャッターもメカシャッター以上に正確ですので、両者はしっかり同期できるのです。

またこの時、シャッタースピード1/100秒(0.01秒)の整数倍である1/50秒(0.02秒)や1/33秒(0.03秒)1/25秒(0.04秒)で撮ったとすると、今度は1波長(2山)、1.5波長(3山)、2波長(4山)分取り込む事になりますので、この場合もムラは全く発生しません。(逆に1/200秒や1/400秒では発生します)

ですが手ブレ等を考えれば、当然1/100秒で撮った方が良いのは間違いないでしょう。

ところがもし1/30秒で撮ったとすると、1.7波長と中途半端な所で1ラインの読み込みが終了しますので、逆にムラが発生する事になるのです。

安全を見てシャッタースピードを更に遅くしたら、むしろ逆効果だったという訳です。

これでご理解頂けましたでしょうか?

フリッカーレスシャッタースピード

先ほどから1/100秒、1/120秒で撮れば良いとお伝えしていますが、厳密にそれを設定するのは難しいのが現実です。

何故ならば、1ステップのシャッタースピードですと、1/60秒の次は1/125秒で、1/100秒も1/120秒も設定できないからです。

また表示上は1/60秒と125秒ですが正確には1/64秒と1/128秒になります。

では1/2ステップと1/3ステップにおける実際のシャッタースピードはどうなうるか言えば、以下の通りです。

32 45 64 91 128 181 256 362 512 724 1024
1/2ステップの実シャッタースピード(単位:1/秒)

32 40 51 64 81 102 128 161 203 256 323 406 512 645 813 1024
1/3ステップの実シャッタースピード(単位:1/秒)

これをご覧頂きます様に厳密に1/100秒と1/120秒の設定はできないのですが、選択可能な1/102秒で誤差2%、1/128秒で誤差7%ですので、恐らくこれぐらいの誤差でフリッカーに気付く事はまず無いでしょう。

こうなると昔のカメラにあったX接点専用のシャッタースピードの様に、フリッカー専用の1/100秒と1/120秒があると都合が良いのですが、どこか対応してくれないものでしょうか。


Nikon F3のX接点(1/80秒)専用シャッタースピード

なおソニーのα9 IIやα1には、高周波フリッカーレスと呼ぶシャッタースピードを小数点単位で調整できる機能があります。


これを使えば、正真正銘のフリッカーレス撮影が可能になります。

なおこれに似たものとして、オリンパスのE-M1 Mark IIやE-M5 MarkIII のフリッカースキャン機能、動画用ですがパナソニックのLumix GH5のシンクロスキャン機能があります。



動画の場合


ついでに動画の話もしておきましょう。

ネットを見ると色々書かれていますが、これも極めて簡単です。

もし動画で蛍光灯のフリッカーを避けたいのでしたら、東日本であればシャッタースピードを1/100秒(もしくは整数倍の1/50秒、1/25等)、西日本ならば1/120秒(もしくは整数倍の1/60秒、1/30秒等)にすればOKです。

これはフレームレートには一切関係ありません。


インバーター蛍光灯


残念ながら話はまだ終わりません。

さすがにこれは無いと思うのですが、蛍光灯のある室内で電子シャッターで撮るからと言って、何も核燃せずに低速のシャッタースピードで撮影するという野暮な事をやられていませんでしょうか。

ご存知とは思いますが、最近の蛍光灯はインバータータイプになっています。

これは従来の蛍光灯とどう違うかと言えば、商用電源より遥かに高い周波数で点滅していますので、カメラがどんなに頑張っても、決してフリッカーを拾う事はないのです。

ですので、存在もしないフリッカーを恐れて、いきなり低速シャッタースピードで撮る事のないように念のためにお伝えしておきます。

なおその室内でフリッカーが発生しているかどうか確認するには、カメラを動画モードにしてシャッタースピードを上げてファインダーにムラが発生するかどうか確認すれば簡単に分かります。(詳細は以下を参照)


実は幣貧乏サイトの周りを見渡しても、インバーター蛍光灯かLED照明しか見当たりません。

それほど今ではトランス付きの昔の蛍光灯は珍しいのです。

実際アマゾンで探す限り、今どきそんな蛍光灯は売っていないと断言しても良いほどです。

そうは言っても過疎地ではまだまだ現役と思われるかもしれませんが、使っている限り劣化しますしのでいつかは故障しましす、そもそも電解コンデンサーが10年以上持つとはとても思えません。

このため、実際に撮った検証写真を添付したいのですが、昔の蛍光灯が見つかるまでお待ち頂ければと思います。


まとめ


それではまとめです。

①非インバータータイプの昔の蛍光灯は、東日本ならば1秒間に100回、西日本ならば120回点滅する。

②電子シャッターでフリッカーが目立つのは、電子シャッターはスキャン速度が遅いため、点滅の山を多く拾うからである。

③またシャッタースピードが速いほど、フリッカーによるムラがくっきり現れる。

④電子シャッターでこれらを低減するには、スキャン速度を早くするかシャッタースピードを遅くすれば良いが、メカシャッターより良くなる事はなく、また(以下を除いて)ムラを完全に無くす事はできない。

⑤ただしシャッターの種類やシャッターボタンを押すタイミングには一切関係なく、東日本ならばシャッタースピード1/100秒(もしくは整数倍の1/50秒、1/33秒、1/25秒等)、西日本ならば1/120秒(整数倍の1/60秒、1/40秒、1/30秒等)で撮れば、蛍光灯の点滅と完全に同期するので、フリッカーのムラを完全に消す事ができる。

⑥動画を撮影する場合も、フレームレートに関係なく上記のシャッタースピードにすればフリッカーを除去できる。

⑦また最近ではフリッカーの発生する蛍光灯は非常に少なくなっているので、室内で撮影する場合は、カメラを録画モードにしてフリッカーが発生しているかどうか事前に確認するのが良い。


以上ですが、お役に立ちましたでしょうか。




電子シャッターで蛍光灯のフリッカーを完全に消す方法





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