思った以上に優れものだった
Canon PowerShoto G1 X Mark III

2019/8:発行


はじめに


フルサイズEOSのサブ機として入手したキヤノンの PowerShoto G1 X Mark III。


APS-Cサイズで光学3倍ズームレンズを搭載したキヤノンのPowerShoto G1 X Mark III

いざ使ってみると、思った以上に使えるではありませんか。

という訳で、早速本機の優れた点をご紹介したいと思います。

もしAPS-Cサイズクラスのデジカメをご検討中の方がいらっしゃいましたら、必見です。


概要


ご存知ない方のために、先ずは本機の概要を簡単にご紹介しておきたいと思います。

PowerShoto Gシリーズは、デジカメの黎明期よりキヤノンのレンズ固定式デジカメのフラッグシップ機として、主にカメラ好きの年配者の方々に長年親しまれてきました。


1 / 1.7 型CCD撮像素子を搭載した8代目PowerShoto G10(2008年発売)

当初は1/2.3型より少し大きめな1/1.8型のCCD撮像素子から始まって、1/1.7型、1.5型そして本機のAPS-Cサイズと次第に大きな撮像素子を採用してきています。

実は、レンズ固定式デジカメでAPS-Cサイズの撮像素子を採用しているのは、国産では本機とリコーのGRシリーズ、それにフジフィルムのXFシリーズ、シグマの三層撮像素子を搭載したDPシリーズのみになります。


フィルムカメラ時代からスナップシューターの名をほしいままにしているGR III

ただしそれらはどれも単焦点レンズを搭載していますので、ズームレンズを搭載しているのは海外モデルで既に生産中止となったライカXバリオ(お値段は何と破格の30万円超!)と本機のみになります。


28-70mm f3.5-6.4のズームレンズを搭載したLeica X Vario

という訳で、一見ただのコンパクトカメラなのですが、その実非常に稀有な存在なのです。

その理由は、標準ズームレンズ付きのミラーレス一眼と完全にバッティングするからなのかもしれません。

また本機が搭載している2400万画素のAPS-Cサイズの撮像素子は、ミラーレスレジカメのEOS M5やEOS Kiss Mと同じ物で、キヤノン独自のデュアルピクセルCMOS AFを搭載しており、AF性能も画質も十分市場実績があると言えます。


基本仕様


ついでに基本仕様も簡単にご紹介しておきましょう。

以下の表をご覧頂きます様に、これを見る限りごくごく一般的なデジカメで、競合する標準ズームレンズ付きのミラーレス一眼と比べて、特に際立った特徴は殆ど見当たりません。

項目 G1 X Mark III EOS Kiss M
+標準ズーム
α6400
+標準ズーム
撮像素子 APS-Cサイズ APS-Cサイズ APS-Cサイズ
画素数 2400万画素 2400万画素 2400万画素
シャッター速度 30秒-1/2000秒 30秒-1/4000秒 30秒-1/4000秒
ISO感度
(拡張)
100-25600 100-25600
(51200)
100-32000
(102400)
ファインダー 236万ドット 236万ドット 236万ドット
モニター 104万ドット
(バリアングル)
104万ドット
(バリアングル)
92万ドット
(上下チルト)
サイズ 115×78×51mm
(レンズ含む)
116×88×59mm
(本体のみ)
120×67×60mm
(本体のみ)
質量 399g 517g 519g


G1 X Mark III

EOS Kiss M

α6400

と言いたい所ですが、競合するミラーレス一眼と比べると、明らかにアドバンテージがいくつかありますので、それを次にご紹介したいと思います。


大きさ


本機の最大のアドバンテージは、何といってもその大きさでしょう。

先ほどご紹介したEOS Kiss Mと比べても、一回り小さいのです。


EOS Kiss M(左)とPowerShoto G1 X Mark III(右)

正面から見ると大した差ではありませんが、驚くべきは上から見たときです。


EOS Kiss M(左)とPowerShoto G1 X Mark III(右)

レンズを格納してしまうと、EOS Kiss Mのグリップ部よりも薄くなるのです。

これくらいの厚さでしたら、バックのちょっとした隙間に入れる事ができますので、可搬性が格段に向上します。

ちなみにソニーの沈胴標準ズームレンズ(SELP1650)も小型で便利なのですが、それでも下の写真の様に本体に装着すれば結構な厚みがあります。


標準沈胴ズームレンズSELP1650(24-75mm F3.5-5.6)

それに対してG1 X Mark IIIはポケットに入る程とは言いませんが、APS-Cサイズでありながらレンズを格納した状態で51mmの厚みは脅威的な薄さです。

そう言うと、ミラーレス一眼に付いている交換レンズの方が性能が良いのだから、当然だと思われるかもしれません。

ところがそうでもないのです。


レンズ性能


という訳で、本機のレンズを前述の2本の交換レンズと比べてみたいと思います。

項目\機種 G1 X Mark IIIの
標準ズームレンズ
EOS Kiss Mの
標準ズームレンズ
ソニーの沈胴
標準ズームレンズ
名称
(型名)
N/A EF-M15-45mm
F3.5-6.3 IS STM
E PZ 16-50mm
F3.5-5.6 OSS
(SELP1650)
焦点距離
(換算)
24-72mm 24-72mm 24-75mm
最小絞り F2.8-5.6 F3.5-6.3 F3.5-5.6
最短撮影距離 10cm 25cm 25cm
手ブレ補正 4.0段分 3.5段分 未公開

すると上の表の様に、G1 X Mark IIIのズームレンズの方が明るい上に、最短撮影距離も手ブレ補正効果もG1 X Mark IIIの方が明らかに優れているのです。

ついでにお伝えしておきますと、G1 X Mark IIIのズームレンズは撮像素子と一体で組み立てられていますので、光学系の組み立て精度も(ミラーレス一眼の交換レンズより)G1 X Mark IIIの方が間違いなく上と言えます。


G1 X Mark IIIのズームレンズは撮像素子と一体で組み立てられている

おまけにG1 X Mark IIIの撮像素子上のマイクロレンズは、このズームレンズに特化して設計されていますので受光素子への集光性も間違いなく優れています。


受光素子の1個1個に集光用のマイクロレンズが乗っている

ここまで聞いただけで、かなり興味を持たれるのではないでしょうか。

劣っている点はレンズを交換できないという事くらいなのですが、ミラーレス一眼のユーザーの大多数は滅多にレンズを交換しない事を考えれば、大きなハンディにはならないでしょう。


ストロボ全速同調


本書が特に指摘したいアドバンテージは、(実は入手するまで知らなかったのですが)本機はAPS-Cサイズでありながらレンズシャッターを採用している事です。

レンズシャッターのメリットは、レンズ交換式カメラに使われているフォーカルプレーンシャッターと比べて振動が少ない事と、何と言ってもストロボが全速同調する事です。


PowerShoto G1 X Mark IIIの内蔵ストロボは全速同調する

全速同調と聞くと、今どきのストロボならばハイスピードシンクロが可能なので、同じ事だと思われるかもしれません。

ですがハイスピードシンクロとは、ストロボを高速で連続発光させ(尚且つ高速のシャッター速度になるとフォーカルプレーンシャッターのスリット幅が狭まる)ため、高速のシャッター速度になればなるほど、ストロボの光が届かなくなるのです。

ところがレンズシャッターの場合は、仮にシャッター速度1/2000秒でも、最大発光量のまま照射できます。

このため本機の小さな内蔵ストロボであっても、真夏のビーチで1/2000秒で発光させても、大光量のストロボ並みに人物に光が届くのです。(詳細についてはこちらへ)


G1 X Mark IIIでの日中シンクロ(F4.0 1/1000秒 ISO160)

ちなみにミラーレス一眼にもストロボが内蔵されていますが、フォーカルプレーンシャッターを採用しているため、この様にストロボの光を届かせる事はできません。

なお殆ど全てのコンパクトカメラは、レンズシャッターを搭載していますので、ストロボ全速同調自体は然程(さほど)めずらしいものではないのですが、APS-Cサイズのズームレンズ搭載デジカメでレンズシャッターを搭載しているのは、本機だけと言えます。

これもかなりの優位性ではないでしょうか。


ストロボがレンズ光軸に近い


ストロボ全速同調と共に、ストロボに関してもう一つの優位性があります。

それはストロボがレンズの光軸の真上にあるという事と、ストロボがレンズに非常に近いという事です。


PowerShoto G1 X Mark IIIの内蔵ストロボはレンズ光軸の真上にあり更にレンズに近い

それでどんなメリットがあるかと言えば、ストロボ発光時に被写体の影が出にくいのです。

一般的なコンパクトデジカメの場合、内蔵ストロボはレンズの右上(もしくは左上)に搭載されているのが一般的です。


コンデジのストロボは、一般的にレンズの光軸からズレて配置されている(IXY 650)

この場合、ストロボを発光すると、どうしても被写体の右下(もしくは左下)に影ができてしまいます。


ストロボがレンズの光軸からズレると反対側に影ができる

また、更にレンズに遮られない様にするためストロボがポップアップするものもありますが、その場合被写体の左下側に影が出易くなってしまいます。


内蔵ストロボがポップアップするキヤノンのGX7 III

また一眼レフの場合、レンズの真上にポップアップ式のストロボが内蔵されているものがありますが、やはりレンズの光軸から離れているため、この場合被写体の下に影ができてします。


一眼レフの場合、内蔵ストロボが高くポップアップする(Nikon D750)

ですが本機の場合、下の写真にある様にストロボがレンズの光軸に近いため、殆ど影ができないのです。


G1 X Mark IIIのストロボはレンズの光軸に近いため、殆ど影ができない

ますます食指を動かされるのではないでしょうか?


露出補正ダイヤルがある


これは際立って長所と言えないかもしれませんが、本機には露出補正ダイヤルがあります。


G1 X Mark IIIの露出補正ダイヤル

専用の露出ダイヤルがある事については賛否両論あり、実際キヤノンのEOSですら、露出補正ダイヤルがあるモデルも無いモデルもあります。

とは言え、間違いなくこれは本機の大きなアドバンテージと言えます。

ご存知の様にフィルムカメラ時代でしたら、操作するのは①シャッター速度②絞りだけで済みましたが、その後AE機能が付加されてから③露出補正が必要になり、更にデジカメになってからは④ISO感度までも頻繁に操作する事になりました。

となると、できれば4つのダイヤルがあると便利なのですが、コストや設置場所の関係で、なかなかそうはいきません。

実際EOSにおいても、4つのダイヤルが揃っている機種はありません。

ところが本機の場合、この①露出補正ダイヤルと共に本体側に②メインダイヤルと③サブダイヤル、そして鏡筒側の④コントロールリングの4つのダイヤルが揃っている事になります。

使ってみたくはなりませんでしょうか。


純正水中ハウジングがある


これは左程重要ではないかもしれませんが、Gシリーズは初代から水中ハウジングが用意されているのです。


本機専用の純正水中ハウジング(WP-DC56)

水中ハウジング自体、サードパーティーから多数発売されているので然程珍しいものではありませんし、それほど需要があるとは思えないのですが、律義に作り続ける姿勢には頭が下がります。


直してほしい点


とは言え、当然ながら気になる点が無い訳ではありません。

もしかしたら改善して貰えるかもしれないとの僅かな期待を込めて、(忘れない内に)いくつか書いておきたいと思います。

コントロールリングのクリックが無い


既にお伝えしまし様に、本機の鏡筒の根元には各種設定を変える事ができるコントロールリングがあるのですが、そのリングにはクリックがないのです。


クリックが無くクルクル回るコントロールリング

ですので、往々にして設定したい値を通り過ぎて、また逆に回転させるという事がしばしば起きます。

キヤノンとしては動画を意識してクリックを無くしたのかもしれませんが、スチール撮影においてはやっぱりクリックがあった方がしっくりいきます。


内蔵NDフィルター


これも昔からのGシリーズの特徴と言えるのかもしれませんが、本機には3段分のNDフィルターが内蔵されています。

とは言え、レンズは15mm(換算24mm)でF2.8なものの、45mm(換算72mm)でF5.6ですので、開放で撮った所でボケは大した事はありません。

中には使う方もいらっしゃるのでしょうが、極めて少数なのは間違いないでしょう。

だったらNDフィルターを削除して価格を下げてくれるか、さもなければ専用のフィルターを用意して貰う方が数倍便利だと思うのですが、いかがでしょうか。


フィルター非推奨


これは驚かれるかもしれませんが、本機においてはフィルターは非推奨になっています。


直径37mmのネジ山は切ってあるもののフィルター非推奨のレンズ

この理由はレンズ性能を徹底的に追い込んだ結果、フィルターを付けると広角時にケラレが発生する可能性があるためとの事です。

ところが実際に37mm系のフィルターを装着しても、特に気になるケラレは発生しません。

ただしフィルターを装着した状態で水中ハウジングに入れてズーム操作を行なうと、レンズ先端がハウジング内部にぶつかるという不具合が生じます。

もしかしたら前述のNDフィルターを内蔵しているので、フィルターは付けれなくても良いと割り切ったのかもしれませんが、NDフィルターよりPL(偏向)フィルターを使いたいユーザーの方が遥かに多い事でしょう。

できる事なら、本機専用の厚みの薄いフィルターを、純正アクセサリーとして発売してほしいものです。


バリアングルモニター


最近発売されたキヤノンのフルサイズミラーレス一眼であるEOS RやEOS RPと同様に、本機のモニターもバリアングル式が採用されています。


バリアングル式を採用したG1 X Mark III

これもどうなんでしょう。

他社製カメラの大多数がチルト式を採用している事を考えると、やはりスチールカメラはチルト式の方が良いのではないでしょうか。

実際、先代のG1 X Mark IIのモニターはチルト式だったのです。


先代のG1 X Mark IIのモニターはチルト式

そしてもっと興味深いのは、その先代に当たる初代G1 Xのモニターはバリアングル式だったのです。


初代G1 Xのモニターはバリアングル式

動画優先ならバリアングル式、静止画優先ならチルト式とキヤノンもそろそろ明確にポリシーを決めるべきではないでしょうか。


まとめ


以上をまとめると以下の様になります。

アドバンテージ ディスアドバンテージ
現在市場で唯一無二のAPS-Cサイズで
3倍ズームレンズ付きコンデジ
コントロールリングのクリックが無い
レンズ交換式と比べると小型軽量で、
厚み51mmは大きな優位性
殆ど使わない内蔵NDフィルター
レンズ性能もトップクラス フィルターが付けれない
ストロボ全速同調 やっぱり不便なバリアングルモニター
ストロボがレンズ光軸に近い
露出補正ダイヤルを含め4つのダイヤル
がある
純正水中ハウジングがある

くどい様ですが、既にライカXバリオは生産中止になっていますので、ズームレンズを搭載したAPS-Cサイズのデジカメでレンズシャッターを採用しているのは、世界中探しても本機だけになります。

1台いかがでしょうか?




思った以上に優れもだったCanon PowerShoto G1 X Mark III





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