トリミングやクロップした場合の
画角と焦点距離と被写界深度の求め方

2020/05:発行
2020/06:誤記修正

目次



1. はじめに


デジカメの解像度が上がった事に伴い、トリミングをして写真の一部を拡大して使用する機会が多くなってきました。


写真をトリミングすると望遠レンズで撮ったのと同じような写真になる

トリミングすれば、画角が変わり望遠レンズで撮ったのと同じ画像になるのは、どなたもご存知の事でしょう。

では、例えば写真を2/3の大きさにトリミングしたら、画角はどれだけ変わって、レンズの焦点距離はどれくらい変わるのでしょうか?

また被写界深度は変わるのでしょうか、それとも同じなのでしょうか?

今回はその謎に迫ってみたいと思います。


2. 画角の変化


それでは先ず、画角の変化から考えてみます。

下の写真は、85mm F1.4のレンズを使って2m程離れた被写体を開放で撮っています。


  85mm F1.4で撮った写真        中央部分を2/3にトリミングした写真

そして右側の写真は、その中央の2/3部分を抜き出して拡大した写真になります。

本書ではこれを、2/3にトリミングした写真と呼び、2/3をトリミング率と呼ぶ事にします。

また撮像素子上でこの話をすると、左の写真が撮像素子の全域(36mm×24mm)に写った画像で、右の写真はその中央の24mm×16mの領域に写った画像と言えます。


APS-Cサイズはフルサイズの2/3をトリミングしたのと同じ

ちなみにこの2/3のトリミング率とは、(機種によって多少バラつきが有りますが)フルサイズをAPS-Cサイズにクロップしたのと同じ比率になります。

このため以降の説明は、フルサイズをAPS-Cサイズにクロップした場合も同じ、と思って頂ければと思います。

それが分かった所で、この条件でトリミングした場合の画角を、計算で求めてみます。


画角の求め方

トリミングした場合の画角については、レンズの焦点距離とトリミング率が分かれば計算で求められるのですが、学生時代に苦労した三角関数を使わなければならいので、ここでは簡単に求められる方法をご紹介します。

先ず焦点距離85mmの垂直方向の画角を、ネットやレンズのカタログ等でます。


キヤノンの公式HPにある85mmレンズの画角

すると垂直方向の画角は、16度と書かれています。

次に、この画角にトリミング率(ここでは2/3)を掛ければ、トリミングした場合の画角が求められます。

トリミングした場合の画角 元の画角×トリミング率
16度×2/3
11度


トリミング率が2/3であれば画角も2/3になる

もしトリミング率が1/2であれば、画角は8度になります。

なおこの計算方法ですと、垂直方向の画角が45度(焦点距離35mmよりワイドな広角レンズ)を超えてくると、徐々に誤差が発生してきますのでご注意願います。

ですので、もしより正確に計算したい場合はこちらをご参照願います。


3. 焦点距離


画角が分かった所で、次はレンズの焦点距離です。

レンズのカタログを見て、画角からレンズの焦点距離を探し出す方法もありますが、これは計算だけで簡単に求められます。

レンズの焦点距離はトリミング率に反比例しますので、今回のケースでしたら、元のレンズの焦点距離をトリミング率で割れば求められます。

この場合でしたら、85mmを2/3で割って128mmになります。

すなわち、同じ距離から128mmのレンズで撮れば、画角は11度になり、85mmで撮った写真を2/3にトリミングしたのと同じ写真が撮れるのです。


トリミング率が2/3だとするとレンズの焦点距離は3/2倍になる

またもしトリミング率が1/2だとすると、レンズの焦点距離は2倍の170mmになります。

なお先ほどの画角の計算では、画角が広くなると誤差が大きくなりましたが、この焦点距離の計算は常に成り立ちますので、ご安心下さい。

また参考で、APS-Cサイズ以外のトリミング率(対角線比)を、以下に載せておきます。

サイズ FULL APS-C APS-C
(Canon)
1.5型 4/3 1型 1/1.7型 1/2.3型
変換係数 1 0.67(2/3) 0.62 0.54 0.50 0.37 0.22 0.18
フルサイズを基準にした各サイズのトリミング率

ですので、もし85mmのレンズをマイクロ4/3のカメラに使用すると、トリミング率は0.5となり、焦点距離は170mm(=85mm÷0.5)になります。


4. 絞り


さて、ここまでは比較的簡単だったのですが、問題は絞りです。

上段でお伝えしました様に、左は85mm F1.4で撮った写真で、右の2/3にトリミングした写真は128mmのレンズで撮った同じ画角の写真になります。


85mm F1.4                128mm F1.4?

では128mmのレンズを使って、F1.4で撮れば右と同じ写真が撮れるでしょうか?

先に答えを言ってしまいますと、NOです。


世の中にウマイ話は無い

もし128mm F1.4のレンズで撮ると、もっと背景がボケるのです。

実際に撮り比べた写真は後ほどお伝えするとして、先に世の中にそんなにウマイ話はないという事をお伝えしたいと思います。

ご存知の通り、市販で焦点距離128mm F1.4の大口径レンズは存在していないものの、もしこのレンズが存在しているとなると、85mm F1.4のレンズより遥かに高価(恐らく20万円超)になるのは間違いないでしょう。

何故ならば、下の広告にあります様に同じ開放値のレンズであれば、(多少バラつきはあるものの)望遠になるほど値段が高くなるからです。


FE85mm F1.4 GM

EF85mm F1.4L

105mm F1.4

105mm F1.4 DG

FE135mm F1.8

すなわち、もし写真をトリミングするだけで、同じ開放値の明るい望遠レンズ(ここでは128mm F1.4のレンズ)で撮ったのと同じ写真になったとしたら、とんでもなくオイシイ話なのですが、そうは問屋が卸さないという訳です。


トリミングするとレンズの価値を下げてしまう

では2/3にトリミングすると、128mm レンズの絞りはいくつになるのでしょうか?

答えを先に言ってしまいますと、絞りをF2.1にしたのと同じになるのです。

ではこのF2.1をどうやって求めたかを、本書の読者にだけそっとお教えしましょう。

実は、単にF1.4をトリミング率の2/3で割っただけなのです。

ですので、もしトリミング率が1/2だとしますと、F1.4を1/2で割って170mmのF2.8で撮ったのと同じ被写界深度になるのです。

ちなみに128mm F2.1クラスのレンズですと、前述のレンズよりかなりお安くなる(恐らく10万円以下)のは間違いありません。


FE85mm F1.8

EF85mm F1.8

EF135mm F2L

それを知って頂いた上で、先ほどの写真をもう一度見て頂けますでしょうか。


85mm F1.4                128mm F2.1

これをご覧頂きます様に、左の様にバストアップの写真で背景をこれだけボカスには、どうしても高価な85mm F1.4のレンズを使わなければならないのですが、右の様なショルダーアップの写真は128mm F2.8というそれより安価なレンズで撮れてしまうのです。

ですので、ポートレートの様に背景をボカした写真においては、トリミングすればするほど、その撮影したレンズの価値をどんどん下げる事になると言えるのです。

とは言え、これとは逆にトリミングのメリットもありますので、それについては本書の後半でお話します。

ところで、トリミングした写真の絞り値がそんなに簡単に求められる筈がない、と思われるかもしれませんが、実は世の中は非常にシンプルなのです。

知らないが故に、複雑だと思い込んでしまうのです。

ではなぜこれで絞り値が求められるかについては、こちらの記事をお読み頂く事で次に行きます。


5. 検証


先ほど、128mmのレンズの絞りをF2.1にして撮れば、85mm F1.4で撮った写真を2/3にトリミングしたのと同じになるとお伝えしました。

では、実際にそうなるかどうか、これからお見せしましょう。

とはいえ、生憎その条件にピッタリ合うレンズの持ち合わせがないため、取り敢えず24-105mm F4.0のズームレンズを使い、70mm F4.0と105mm F4.0で撮り比べてみます。

この場合105mmは70mmの丁度3/2倍ですので、70mmで撮った写真を2/3にトリミングすれば、105mmで撮った写真と同じになる筈です。

そう思って撮った写真が、以下になります。

これは被写体までの距離が約1mで、後方の光源が被写体から4mほど後方にあります。


70mm F4.0で撮った写真        2/3にトリミングした写真

ご覧の様にトリミングした写真は、被写体もボケ量も3/2倍大きくなっています。

こうなると、105mm F4.0で撮った写真とボケ量は同じになると、誰もが思ってしまいます。

さてこのトリミングした写真を、実際に105mm F4.0で撮った写真と比べると、以下の様になります。


 2/3にトリミングした写真(ISO3200)   105mm F4.0で撮った写真(ISO3200)

いかがでしょうか。

背景の光源は、実際に105mm F4.0で撮った方がボケているのが分かって頂けると思います。

それでは次に、F4.0に3/2を掛けたF6.3で撮った写真と比べてみます。


 2/3にトリミングした写真(ISO3200)   105mm F6.3で撮った写真(ISO8000)

上の写真をご覧いただきます様に、背景のボケの大きさは同じになりました。

ボケの大きさが同じという事は、被写界深度も同じになったと言えます。

これから言える事は、トリミング率をアップすればするほど望遠で撮った写真になり、尚且つ(実際にレンズを使って撮った場合より)被写界深度はどんどん深くなるという事です。

そう聞くとサラッと聞き流してしまいそうですが、非常に耳寄りな話がありますので、次の説明をじっくり読んで頂ければと思います。


耳寄りな話その1

先ず一つ目のメリットが、既にお伝えしました様に、トリミングすると被写界深度が深くなるという事です。

上の場合ですと、70mm F4.0で撮った写真をトリミングすると、128mm F4.0のレンズで撮った場合より被写界深度が深くなりました。

ではどのくらい深くなったかと言えば、F4.0を2/3で割ったF6.3まで絞った場合と同じという事です。

もし1/2にトリミングしたら、140mm(70mm÷1/2)のレンズをF8.0にまで絞ったのと同じ被写界深度になります。

ただし、これはあくまでも70mm F4.0で撮った写真との比較であって、ピントの外れた写真のピントが合うという訳ではありませんので、念のため。


耳寄りな話その2

さて、上で見て頂いた最後の2枚の写真をもう一度見て頂けますでしょうか。

画角もボケ(被写界深度)も明るさも、全く同じ写真なのは間違いありません。

ところが、キャプションに書いてあるISO感度を見て下さい。

片方はISO3200なのに対して、片方はISO8000なのです。

これはF4.0からF6.3に絞ったため、写真の明るさ(露光量)を同じにするために上げたのですが、全く同じ写真なのにISO感度が異なるのです。(もちろんシャッター速度は全て同じです)

何が言いたいかと言えば、トリミングすると全く同じ写真でありながら、実際にレンズで撮った場合よりISO感度を下げて撮れるのです。

ですので2枚の写真をもっと拡大して見ると、ISO8000の写真はそれなりにノイズが乗っています。

もし1/2にトリミングしたら、140mm(70mm÷1/2)のレンズをF8.0にまで絞る必要がありますので、ISO感度を12800まで上げなければなりません。

ですので広角で撮っておいて、後でトリミングすれば(実際に同じ画角のレンズを使って撮る場合より)ISO感度を抑える事ができるのです。

また別の言い方をすれば、もしISO感度が同じであれば、(既にお伝えしました様に)トリミングすると元写真を広角レンズで撮った分、実際に同じ画角のレンズで撮った場合より被写界深度が深くなると言えます。

このため星空ポートレートの様に、ISO感度をこれ以上もう上げられない、かと言って人物と星にピントを合わせるためにもっと絞らなければいけない様な、もう一息感度を上げたい場合に特に有効なのです。


トリミングをすると同じ画角のレンズで撮るよりISO感度を抑えられる

暗い環境で撮ったのには、訳があるのです。

覚えておいて、損はありません。


6. まとめ


さてまとめです。

①トリミングした場合の画角は、撮影したレンズの画角にトリミング率(ここでは2/3)を掛ければ求められる。

②トリミングした場合の焦点距離は、撮影したレンズの焦点距離をトリミング率(ここでは2/3)で割れば求められる。

③トリミングした場合の絞り値は、撮影したレンズの絞り値をトリミング率(ここでは2/3)で割れば求められる。

④このため、トリミングを行うと画角が狭くなり望遠で撮った様になると共に、被写界深度は深くなる。

⑤故にボケを重視した写真の場合、トリミングをするとレンズの価値を下げる事になってしまう。

⑥ただし被写界深度を重視した写真の場合、トリミングすると、全く同じ写真をISO感度を下げて撮れる事になる。


少しはお役に立ちましたでしょうか?




トリミングやクロップした場合の
画角と焦点距離と被写界深度の求め方





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